第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM
PassMarket【一般、子ども(4歳~小学生)】
PassMarket【支援会員、障がい者・付添者】
多摩市立永山公民館(ベルブ永山 3階)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ 7階)
建設会社の役員・壬生(渡)は56歳。鎌倉で生け花を教える堀川多江(吉永)は48歳。20年も前に葬儀で一度会っただけの二人が、偶然に再会する。二人はそれぞれの人生を振り返り、これからの生き方を見すえながら、しだいに愛を深めていく。
これは一つの寓話である。年配の男女の浮世離れした純愛物語のことではない。男と女がそれぞれに歳を重ねて、重ねただけの美しさをたたえている在りようが寓話なのだ。スーツの着こなしや日本酒の燗をつける、そうした一つひとつの挙措動作や表情が、大人の人格と品性を表して、美しく歳をとるとはこういうことかと魅了される。
また、これはレクイエムである。戦後日本の繁栄の、そして繁栄の陰に失われていった日本的たたずまいへの鎮魂だ。各地に建造されたビルや高速道路や新幹線は、日本の風物や心を追い落とした。しかし渡哲也が嘆くように、その存在は何とはかないことだろう。千年の時を超えて人々の信仰や美意識を集める奈良京都の古刹はもちろん、雨漏りのする平凡な日本家屋にも及ばない。だから物語中の男と女は新古今和歌集に惹かれていく。功利と合理性の支配する中世へと移りゆく時代にあらがうように、俗世を離れ歌詠みの粋を集めた新古今の世界に、男と女は吸い寄せられるように傾いていったのだろう。(三)