第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM
生まれつき身体が弱く、甘やかされて育ったつぐみ(牧瀬)はわがままな18歳の少女。東京で暮らす従姉妹のまりあ(中嶋)はつぐみに招かれ、高校まで過ごした西伊豆へ渡る。なつかしい思い出さながらに穏やかな日々を送る彼女らの前に、恭一という青年があらわれるのだった。
近しい人に対して男言葉で悪態を吐く主人公つぐみ。彼女の傍若無人の振る舞いは、甘やかされたため形成されたわがままな性格というだけでなく、病気や死と背中合わせでいる不安への必死の抵抗だ。デビューしたばかりの牧瀬里穂が、烈しさと脆さが同居したやりきれない魅力を見事に表現している。
そんなつぐみを見守り続けたまりあは家庭環境の変化で東京に移り住んでいたが、ひと夏を再びつぐみと過ごすことになり、そこで事件が起きるのだが、演じる中嶋朋子の落ち着きのあるモノローグ調のナレーションが良い対比となっている。
また、同年公開の『櫻の園』で注目を浴びた白島靖代がつぐみの姉を演じていることもあってか、その時代の空気感が西伊豆というロケーションに詰め込まれており、ふわりとした懐かしさと目の離せない鮮やかさが感じられる一本だった。(理)
劇団の研究生・三田静香(薬師丸)は、芝居のために先輩俳優と一夜を共にするなど、芝居に打ち込む日々を送っていた。そんなある日、看板女優・羽鳥翔のスキャンダルの身代わりとなった彼女は、その代償として舞台「Wの悲劇」のヒロインの座を手に入れるのだが……。
80年代の角川映画の中でも『セーラー服と機関銃』『時をかける少女』と本作は何度も観返す。欲望に忠実な大女優を怪演した三田佳子、主人公・静香のライバルとなるかおりを演じる高木美保、女優になるための野心を隠さない静香を演じる薬師丸ひろ子の、嫉妬や憎悪の絡む熱演が素晴らしい。個人的には、世良公則演じる森口というキャラクターが好きだった。静香を想いながら、彼女の女優への情熱と才能を誰よりも信じた森口。しかし自分を見失わない静香の選択もまた大変に魅力的だった。薬師丸ひろ子は今も唯一無二の魅力を放つが、この役で演じた“女優への執念”がキャリアを後押ししているように見えるのは、本作ファンである私の妄想あるいは願望が過ぎるだろうか。(な)