第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
弥次さん(長瀬)は愛する喜多さん(中村)が「現実(リアル)が分からない」と言うのを聞いて、リアルを見つけ出すためオートバイでお伊勢参りへと旅立つ。道中では変わった者との出会いの連続。一方、弥次さんには妻がいて……。
弥次さんと喜多さんが手をつないでスキップをしていることが大変微笑ましい。2人は恋人同士なのだ。この物語は十返舎一九の「東海道中膝栗毛」を元にした、しりあがり寿の漫画が原作。喜多さんはヤク中なのでリアルと幻想が混同している。弥次さんはそれをやめさせるのに一生懸命で、喜多さんのことが大好き。そんな喜多さん思いの弥次さんは「てやんでい!」と男らしいが、可愛く見えてくる。観る前からなんとなく感じてはいたが、ただの時代劇ではない。さすがクドカン作品。ただ、この作品がクドカンの初監督作品ということに驚いた。喜多さんの幻想のシーンでは一見カオスなシーンの連続のため、何が起こっているのかわからない。終盤にかけて死生観が色濃くなり、個性的な演出で観るものを驚かせる。破茶滅茶なのも悪くない。キャストが大勢いるため書ききれないのだが、役者の使い方が豪華。個人的に必見なのは小池栄子、荒川良々、麻生久美子。(藤)
織田信長(三宅)が現代にタイムスリップ! やってきたのは「連続時代劇 織田信長」の撮影現場だった! 「本当の自分はこんな人物ではない!」と短気な信長はぶちギレ、脚本を勝手に書き換えた! それは桶狭間も鉄砲隊も登場しない、マニアックでちょっと笑えるエピソードばかりの、全然“大河ドラマ”じゃない、スケールの小さな小さな“小河(しょうが)ドラマ”だった! 本物の信長演出による、“バカバカしいけど全部史実(ホント)”の時代劇が今、撮影スタート!
細川徹監督と三宅弘城という舞台でも大活躍のお2人による大人の時代劇エンターテインメントです。設定の面白さはもちろんですが、本物の信長が描きたかった自分と私たちの信長像のギャップにスポンと肩すかしをくらい、いつのまにかくすくす笑わされているのが心地いい。それは三宅弘城の役者力と細川監督の細部にこだわった仕掛けあってこそ。エンディングロールの最後の信長の絵にまで目が離せません。共演の秋山竜次(ロバート)、JOYの怪演?にも注目。そして鑑賞後爽やかで晴れやかな気持ちにしてくれるのが太田ディレクター役の松井玲奈。信長によって成長した太田の魂の叫びが信長や撮影チームを動かすシーンには思わずホロリと。細川監督、三宅コンビによるシリーズ?最新作『小河ドラマ 龍馬がくる』が楽しみです。(長)
1971年生まれ、埼玉県出身。放送作家、脚本家、演出家、映画監督を務める。主な作品に、TBSドラマ「天国に一番近い男」脚本、フジテレビ「笑う犬の情熱」構成、映画『オケ老人!』監督、ラジオ「宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD」構成などがある。最近では、舞台時速246億「バック・トゥ・ザ・ホーム2」の作・演出(2018年11月)、アニメ「深夜!天才バカボン」の監督・脚本、『小河ドラマ 織田信長』(17年)に続き時代劇専門チャンネル・関西テレビ『小河ドラマ 龍馬がくる』(18年)の監督・脚本を担当。
1968年生まれ、神奈川県出身。テレビ・舞台・映画で活躍。主な出演作は、舞台「鎌塚氏、腹におさめる」、「修羅天魔~髑髏城の七人~season極」、連続テレビ小説「あさが来た」、『小河ドラマ 織田信長』、「世界一難しい恋」、「奪い愛、冬」、『映画 怪物くん』(2011年)、『中学生円山』(13年)など多数。最近ではドラマ「ぬけまいる」(18年)、宮藤官九郎演出の舞台「ロミオとジュリエット」主演(18年、本多劇場ほか)、『小河ドラマ 龍馬がくる』主演など。