第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
東京下町にある石鹸工場で働いている主人公の寺島町子(倍賞)は、同じ工場の事務職員の毛利道男(早川)と付き合っている。毛利はこの会社の正社員になって都心の本社に勤務することを目指し、社員試験の勉強に励んでいる。そして町子と結婚して下町を抜け出し、あこがれの郊外の公団の団地に住みたいと考えている。平穏な日々。しかしこの後、町子を取り巻く世界は大きく動いていく。
今年もTAMAに団地団参上。今年のプログラムは、山田洋次監督の『下町の太陽』35㎜フィルム上映。団地団の精鋭が1部、2部に渡り、昭和30年代の日本を、団地をバックボーンに語り尽くします。上映する『下町の太陽』は言わずと知れた山田洋次監督の2作目の作品です。主人公寺島町子を演じる倍賞千恵子は、後の『男はつらいよ』の「さくら」へとつながる女性の生き方をはつらつと演じています。昭和30年代を舞台とした作品ですが、ここで描かれているエピソードは平成30年の日本の現状と驚くほどダブっており、そのストーリーには古さをまったく感じさせません。国民総中流と誇っていた日本がいつの間にか二極分化への道をまっしぐらに突き進み、あの時にあった夢が今では見つけることが出来なくなってしまった感です。この映画に描かれている下町と呼ばれる共同体の人々の人間くさい生き方は、もしかしたら今の時代の閉塞感を突き破るヒントになるのかもしれない。
団地団の縦横無尽のトークの展開を今年も存分に味わってください。(竹)
2010年12月、新宿ロフトプラスワンのトークイベントで結成。メンバーがそれぞれの立場から、映画、マンガ、アニメなどに登場する団地について深く考察して大放談を繰り広げる。話題は団地の美観や構造に対する偏愛にとどまらず、団地登場作品の演出論から大衆文化論、果ては都市論や郊外論にまで飛び火。知恵熱必死の知的エンターテインメント集団。
フォトグラファー/ライター。1972年11月3日生まれ。「住宅都市整理公団」(団地マニアのための団体。2000年に設立。団員は2人)の総裁。10年に佐藤大、速水健朗とともに「団地団」を結成。主な著書に「団地の見究」「工場萌え」(共に東京書籍)「ジャンクション」(メディアファクトリー)、「ショッピングモールから考える――ユートピア・バックヤード・未来都市」(東浩紀との共著、幻冬舎新書)など。
19歳の頃、主に放送構成・作詞の分野でキャリアをスタートさせる。その後、ゲーム業界、音楽業界での活動を経て、現在はアニメーションの脚本執筆を中心に、さまざまなメディアでの企画、脚本などを手がけている。団地団発足時からのオリジナルメンバー。脚本代表作として「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」、「サムライチャンプルー」、「交響詩篇エウレカセブン」、「FREEDOM」、「スペース☆ダンディ」、「怪盗ジョーカー」、TVドラマ「ノーコン・キッド ぼくらのゲーム史」など。
ライター・編集者。1990年代まではパソコン雑誌記者。愛車は日産マーチ・カブリオレ。主な著書に「ラーメンと愛国」「バンド臨終図巻」など。TOKYO FM「クロノス・フライデー」パーソナリティ。
編集者・ライター。1974年生まれ。映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズ(現・ギャガ)、およびキネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て、2013年よりフリーランス。著書に「セーラームーン世代の社会論」(すばる舎リンケージ)、「ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代」(PLANETS)。編著に「ヤンキーマンガガイドブック」(DU BOOKS)がある。「サイゾー」「SPA!」「プレジデント・オンライン」などに執筆中。団地団との出会いは、キネマ旬報社の社員だった11年。トークイベント第2回に行ったその日に書籍化をもちかけ、編集担当として「団地団 ~ベランダから見渡す映画論~」を制作、12年に刊行した。当初は裏方だったが、フリーランスになったのを機に正式メンバーとして登壇しはじめる。
1980年富山県生まれ。作家。2012年のデビュー作『ここは退屈迎えに来て』が2018年に映画化される。主な著書に『アズミ・ハルコは行方不明』(2016年映画化)『さみしくなったら名前を呼んで』『あのこは貴族』『メガネと放蕩娘』『選んだ孤独はよい孤独』など。団地団への参加は2013年秋から。実は作家デビュー前、団地団イベントの初回に客として行っていたことを知った稲田さんにスカウトされ、ゲスト出演ののち、レギュラー団員に昇格した。
二人組漫画家“うめ”の作画・演出担当。2001年「ちゃぶだい」で第39回ちばてつや賞一般部門ちばてつや大賞を受賞。代表作「大東京トイボックス」は、マンガ大賞2012第2位、文化庁メディア芸術賞2013審査員推薦作、14年テレビドラマ化もされた。現在は、女子高生と人工知能の恋と冒険を描いた「アイとアイザワ」、育児エッセイ「ニブンノイクジ」などを連載中。団地出身、団地育ち、団地から団地への引越しも経験している“団地エリート”。15年には、団地好き人妻ユニット「団地妻」を結成。16年「団地団」へ入団。