第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【A-1】第10回TAMA映画賞授賞式

11/17[土] パルテノン多摩大ホール

チケット料金

一般
前売:2,500円 / 当日:2,800円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

e+(イープラス)でチケットを買う

寝ても覚めても

  • 2018年/日本・フランス合作/映画「寝ても覚めても」製作委員会、COMME DES CINEMAS製作/ビターズ・エンド、エレファントハウス配給/119分
  • 監督・脚本=濱口竜介
  • エグゼクティブプロデューサー=福嶋更一郎
  • プロデューサー=定井勇二、山本晃久、服部保彦
  • 原作=柴崎友香 「寝ても覚めても」(河出書房新社刊)
  • 脚本=田中幸子
  • 撮影=佐々木靖之
  • 美術=布部雅人
  • 音楽=tofubeats
  • 編集=山崎梓
  • 出演=東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子

ストーリー

朝子(唐田)は、不思議な青年・麦(東出)と運命的に出会い恋に落ちる。幸せな時間を過ごす朝子だったが、ある日突然、麦は姿を消してしまう。それから2年が過ぎ、住んでいた大阪を離れ、東京で働いている朝子の前に、以前の恋人・麦と同じ顔をした亮平(東出・2役)が現れる。

コメント

運命の出会いで始まる物語。その後の折々にも運命的な出来事が物語を推進させていく。登場人物にも、その不自然さを言及させているが、これが物語の映画化でなく物語に対する批評の映画化だとすると腑に落ちる。

現実感の無い、薄い霧の向こうで起きているような麦と朝子の関係。その後の亮平との関係も、どこか壊れそうな危うさが、常にまとわりついている。起きている事柄はドラマチックだが、恋愛映画らしからぬ突き放した冷徹な視点で物語は進む。それは、恋愛というものの社会におけるさまざまな仮構性(結婚して家を買って――)を浮き立たせる。だが本来、恋愛は社会に組み込まれないものなのではないか。その本質は衝動であり、ある意味では破壊的とも言えるのではないか。そして、そのなかに挟まれる震災の爪痕を思わせるシーンの圧倒的な現実感に私たちの住む現実と映画の世界の、その仮構性は変わらないことを思い知るのだ。この映画は観た人の軛を浮き立たせる。願わくは、この映画に触れ、映画を観るという行為の本質に触れて欲しい。(松)

万引き家族

  • 2018年/フジテレビジョン、ギャガ、AOI Pro.製作/ギャガ配給/120分
  • 監督・脚本・編集=是枝裕和
  • プロデューサー=松崎薫、代情明彦、田口聖
  • 撮影=近藤龍人
  • 美術=三ツ松けいこ
  • 音楽=細野晴臣
  • 出演=リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆ、樹木希林、池松壮亮

ストーリー

東京の下町にある古い平屋に、5人暮らしの家族がいた。そこには、治(リリー)と信代(安藤)の夫婦、息子の祥太(城)、信代の妹の亜紀(松岡)、治の母の初枝(樹木)が暮らしており、彼らは初枝の年金と万引きで生計を立てていた。

ある冬の日、治は近所の団地で凍える幼い女の子(佐々木)に出会い、家に連れ帰る。傷だらけの彼女の体を見た信代は、娘として育てることを決め、ここから6人家族での生活が始まった。

コメント

現代、「家族」の形は多様化している。そのなかでも「家族」にとって普遍的なものとは何なのだろうか。この映画を観終わったとき、自然とそんな問いに正対していた。

タイトルの通りこの家族は「万引き」で生計を立てる、いわば「犯罪」を犯している家族だ。そのため、この家族は解体されると同時に、世間のさまざまな正論にぶつかることになる。世間の正論に対峙した彼らは、それぞれが隠していたことや、切なる願いをさらけ出していく。そこには、「血のつながり」を信じる者と、「共に過ごした時間」を信じる者という異なる立場があった。だが、「家族」に願うものは異なっても、彼らは確かに「家族」であることを感じていたのである。

引き裂かれた彼らが、それぞれの道を歩き始めるとき、私たちはその道が正しいかどうかを考えてしまう。しかし、大切なのは正しさではなく、彼らが「家族」であった事実ではないだろうか。この家族に気づかされることは、観客の数あるだろう。(鈴・中)

モリのいる場所

  • 2018年/日活、バンダイビジュアル、イオンエンターテイメント、ベンチャーバンク、朝日新聞社、ダブ製作/日活配給/99分
  • 監督・脚本=沖田修一
  • プロデューサー=吉田憲一、宇田川寧
  • 撮影=月永雄太
  • 美術=安宅紀史
  • 音楽=牛尾憲輔
  • 編集=佐藤崇
  • 出演=山﨑努、樹木希林、加瀬亮、吉村界人、光石研、青木崇高、吹越満、池谷のぶえ、きたろう

ストーリー

「モリ」こと画家・熊谷守一の晩年のとある1日が描かれる。モリ(山﨑)は30年もの間、家から一歩も出ずに庭に出かけて行っては小さな生き物たちを飽くことなく見つめ観察している。妻の秀子(樹木)と暮らす家にはいつもさまざまなお客さんが行ったり来たりし、賑わっている。しかし、近隣にマンション建設の話が持ち上がり……。

コメント

画家・熊谷守一のエピソードをもとに描かれたオリジナルストーリー。「行ってきます」とモリ、「行ってらっしゃい」と妻・秀子さんが言葉を交わし、庭の冒険が始まる。杖をつきながら歩き、時には寝転がり、虫や葉を見つめる。その表情は94歳のおじいさんというのに童心そのものでチャーミングだ。のんびりした空気感に軽快な音楽が乗り、小気味のいい演出が際立つ。次から次にモリの家に来客が絶えないのはひとえにモリと妻・秀子さんのユーモラスで温かな佇まいが人を惹きつけているからに違いない。モリはどんな気持ちで絵を描いていたのだろうか。夜のモリには、昼間には感じなかった悲しみや背負ってきたものを感じた。そしてそれを見守る秀子さんとの間の特別な絆があったように思う。

映画を観ている間、客人のひとりになったようだった。朝日に目覚め、庭では五感を研ぎ澄ましてみる。そして、夜になると瞼が重くなってくる。モリのいる場所で1日を過ごしたような濃い映画だった。(緋)

受賞者プロフィール

是枝 裕和 監督

Koreeda Hirokazu

1962年生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオンにて主にドキュメンタリー番組を演出。95年『幻の光』で映画監督デビュー後、『誰も知らない』(2004年)『歩いても 歩いても』(08年)『奇跡』(11年)などで国内外の高い評価を得る。13年『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。本年『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。

濱口 竜介 監督

Hamaguchi Ryusuke

1978年生まれ、神奈川県出身。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』が国内外で高く評価され、その後も『親密さ』(12年)、『不気味なものの肌に触れる』(14年)などを発表。『ハッピー・アワー』(15年)ではロカルノ国際映画祭やナント国際映画祭などで主要賞を受賞した。初の商業作品となる本作『寝ても覚めても』が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されるなど、海外でも注目を集めている。

沖田 修一 監督

Okita Shuichi

1977年生まれ、埼玉県出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。自主制作作品が国内映画祭で高く評価され、『南極料理人』(2009年)で商業映画デビュー。『キツツキと雨』(11年)で第4回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、『横道世之介』(13年)で第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞を受賞するなど日本映画界期待の監督である。他の監督作品に『滝を見にいく』(14年)『モヒカン故郷に帰る』(16年)などがある。

山﨑 努 氏

Yamazaki Tsutomu

1936年生まれ、千葉県出身。俳優座養成所を経て59年に文学座へ入団、三島由紀夫の戯曲「熱帯樹」(60年)でデビュー。同年『大学の山賊たち』で映画デビュー。63年、『天国と地獄』の誘拐犯役で注目され、その後テレビ「新・平家物語」「必殺仕置人」や伊丹十三監督作品『お葬式』(84年)『マルサの女』(87年)などに出演。2000年紫綬褒章、07年に旭日小綬章を受章。本年『モリのいる場所』では伝説の画家・熊谷守一を演じ、13年ぶりの主演を果たした。

樹木 希林 氏

Kiki Kirin

1943年生まれ、東京都出身。61年に文学座に入り活動を始める。テレビ、映画、演劇において活躍し、2008年に紫綬褒章を受賞、14年には旭日小綬章を受章。『歩いても 歩いても』(08年)、『わが母の記』(12年)、『あん』(15年)では、その年の映画賞を総なめにする。そのほか近作では『そして父になる』(13年)、『海街diary』(15年)、『海よりもまだ深く』(16年)など。本年は受賞作品以外に『万引き家族』『日日是好日』が公開された。2018年9月15日逝去。

上田 慎一郎 監督

Ueda Shinichiro

1984年生まれ、滋賀県出身。中学時代に自主映画を撮り始める。高校卒業後も独学で制作を続け、2009年に映画製作団体PANPOKOPINA(パンポコピーナ)を発足。『恋する小説家』(11年)は第13回TAMA NEW WAVEある視点部門入賞。15年、オムニバス映画『4/猫 ねこぶんのよん』の1編『猫まんま』の監督で商業デビュー。本年、初の劇場用長編映画『カメラを止めるな!』が話題を呼び、全国で拡大上映される。

東出 昌大 氏

Higashide Masahiro

1988年生まれ、埼玉県出身。2012年、俳優デビュー作の『桐島、部活やめるってよ』で日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。13年にはNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」に出演して注目される。『クローズEXPLODE』(14年)、『デスノート Light up the NEW world』(16年)などで主演。本年の出演作として『OVER DRIVE』『寝ても覚めても』『菊とギロチン』がある。20年に『峠 最後のサムライ』の公開が予定されている。

松坂 桃李 氏

Matsuzaka Tori

1988年生まれ、神奈川県出身。2009年、特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」に出演したのち、12年、『ツナグ』『今日、恋をはじめます』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』『キセキ -あの日のソビト-』(いずれも17年)など幅広く活躍。本年は『娼年』『孤狼の血』『不能犯』が公開された。

安藤 サクラ 氏

Ando Sakura

1986年生まれ、東京都出身。2007年、『風の外側』で本格俳優デビュー。翌年、『愛のむきだし』でヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。12年には『かぞくのくに』『愛と誠』などでキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞と助演女優賞をダブル受賞。『百円の恋』(14年)では第39回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか数々の賞を受賞。現在放映中のNHK連続テレビ小説「まんぷく」ではヒロイン・福子役を務める。

松岡 茉優 氏

Matsuoka Mayu

1995年生まれ、東京都出身。2008年、本格的デビュー。『桐島、部活やめるってよ』(12年)などで注目される。『猫なんかよんでもこない。』(15年)、『ちはやふる -下の句-』(16年)で、第8回TAMA映画賞最優秀新進女優賞、第40回山路ふみ子映画賞新人女優賞を受賞。『勝手にふるえてろ』(17年)で東京国際映画祭東京ジェムストーン賞を、日本映画プロフェッショナル大賞で主演女優賞を受賞。本年はほかに『万引き家族』に出演した。

今泉 力哉 監督

Imaizumi Rikiya

1981年生まれ、福島県出身。名古屋市立大学芸術工学部在学中から自主映画制作に取り組む。2009年『最低』で第10回TAMA NEW WAVEグランプリを受賞。10年、音楽ドキュメンタリー『たまの映画』で商業監督デビュー。12年、『こっぴどい猫』が海外で高い評価を得ると、『サッドティー』(14年)『知らない、ふたり』(16年)『退屈な日々にさようならを』(17年)などを発表。今後、新作2本の公開が控えている。

三宅 唱 監督

Miyake Sho

1984年生まれ、北海道出身。2007年映画美学校卒業後、初長編『やくたたず』(10年)を監督。劇場公開第1作『Play back』(12年)がロカルノ国際映画祭に正式出品され、高崎映画祭新進監督グランプリ、日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。ほかに『THE COCKPIT』(14年)、初の時代劇に挑戦した『密使と番人』(17年)など。本年公開の『きみの鳥はうたえる』は佐藤泰志の小説の映画化4作目にあたる。19年には『ワイルドツアー』が公開予定。

吉村 界人 氏

Yoshimura Kaito

1993年生まれ、東京都出身。『ポルトレ PORTRAIT』(2014年)で映画主演デビュー。以降、『百円の恋』(15年)『ディストラクション・ベイビーズ』『TOO YOUNGTO DIE! 若くして死ぬ』『太陽を掴め』(いずれも16年)『獣道』『劇場版お前はまだグンマを知らない』『関ヶ原』『ビジランテ』(いずれも17年)など数々の映画に出演。本年は『サラバ静寂』『悪魔』『モリのいる場所』に出演している。

吉沢 亮 氏

Yoshizawa Ryo

1994年生まれ、東京都出身。2009年に行われた「アミューズ全国オーディション2009 THE PUSH! マン」で特別賞を受賞しデビュー。「仮面ライダーフォーゼ」シリーズ(11~12年)で注目を浴び、その後、『アオハライド』(14年)『オオカミ少女と黒王子』(16年)『斉木楠雄のΨ難』(17年)など数々の映画に出演。本年の主な出演作は『悪と仮面のルール』『リバーズ・エッジ』『ママレード・ボーイ』『猫は抱くもの』など。

深川 麻衣 氏

Fukagawa Mai

1991年生まれ、静岡県出身。2011年から16年まで、アイドルグループ「乃木坂46」の第1期生として活動する。卒業後は女優としての活動を開始。17年には舞台「スキップ」で初主演を務め、テレビドラマ作品では「プリンセスメゾン」「世にも奇妙な物語'17秋の特別編“ポニーテール”」などに出演する。本年は『パンとバスと2度目のハツコイ』で映画初出演・初主演を果たした。

伊藤 沙莉 氏

Ito Sairi

1994年生まれ、千葉県出身。2003年、9歳の時にテレビドラマ「14か月~妻が子供に還っていく~」でデビュー。17年、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の演技で注目を集める。本年は『榎田貿易堂』『寝ても覚めても』『パンとバスと2度目のハツコイ』『blank 13』やテレビ版「この世界の片隅に」に出演。そのほかラジオ番組「伊藤沙莉のsaireek channel」を9月から務めるなど多方面で活躍している。

プログラム一覧

今泉力哉監督、三宅唱監督
東出昌大氏、金原由佳氏(映画ジャーナリスト)
望月衣塑子氏(東京新聞社会部記者)
大九明子監督、菊地健雄監督、白石裕菜企画プロデューサー、八尾香澄プロデューサー
伊藤沙莉氏、渋川清彦氏、飯塚健監督
高橋隆大氏、長尾理世氏、石丸将吾氏、唐鎌将仁氏、飯野舞耶氏、律子氏(以上出演者)、石川貴雄氏(助監督)
清原惟監督、佐々木敦氏(批評家/HEADZ)、長尾理世氏(『ゾンからのメッセージ』出演)、律子氏(『ゾンからのメッセージ』、『わたしたちの家』出演)
ベルトラン・マンディコ監督、エリナ・レーヴェンソン氏(女優)、五所純子氏(文筆家)
有坂塁氏(移動映画館「キノ・イグルー」代表)
原一男監督
遠藤麻衣子監督、夏目深雪氏(批評家、編集者)
村川透監督
団地団
(大山顕氏、佐藤大氏、速水健朗氏、稲田豊史氏、山内マリコ氏)
細川徹監督、三宅弘城氏
菊地健雄監督、片桐はいり氏
カメ止めチーム
中野ダンキチ氏(サメンテイター)、藤田みさ氏(ラジオパーソナリティ)、中野将樹氏(芸術家)ほか
深川麻衣氏、志田彩良氏
枝優花監督、穂志もえか(保紫 萌香)氏、金原由佳氏(映画ジャーナリスト)