第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
ゾンビ映画撮影中に本物のゾンビが襲ってくる。リアリティにこだわる監督(濱津)は撮影を続けカメラを止めない。本気で逃げ回る俳優陣とスタッフたち。そして監督。カメラはぶれまくり、レンズに鮮血は飛び散ってくる。いかにもの低予算インディーズ作品が出来上がった。37分ワンカットゾンビ映画。だが……!
正直、ゾンビ映画(?)でこんなに笑うとは思っていなかった。口コミが広がり一気に上映劇場を増やし話題を集めた『カメラを止めるな!』。観る前はあまり期待せずにいたが、良い意味で見事に裏切られた。前半はまったくカメラが止まらないので、その後の伏線回収の嵐に「これだったのか~」と心のなかで叫んでいたら、後方の席から「わっ」と笑い声が聞こえた。次の瞬間には会場中が笑いで包まれ、気がついたら他の観客と一緒に大笑いしていた。これほど会場中が温かい雰囲気に包まれた映画は初めてで、観終わった後は会場にいた観客と秘密を共有する仲間になったような気分でいた。
ここまで多くの人の胸に刺さった理由は、「映画って面白い!」が詰まっているからではないだろうか。低予算だろうが関係なく会場が一体となった空間はたしかにそれが感じられた。あらためて映画の面白さに気づかせてくれた上田監督の次回作はどうしても気になってしまう……。(北)