第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
「暴対法」成立直前の昭和末期、かつて戦争とまで呼ばれたヤクザの勢力争いが勃発した広島で、新たに燻り始めていたヤクザ同士の抗争が激化。組織に深く寄り添うことで組織間のバランスを保ってきたマル暴刑事・大上(役所)と新人刑事・日岡(松坂)も暴力の大きな渦に次第に飲み込まれていく。
1970年代に一世を風靡した東映「実録ヤクザ路線」をそのまま継承し、平成末期の現代に、野蛮で醜くもしたたかな当時の男どもの生きざまを蘇らせた、白石監督の渾身の作品。北野武監督の描く深く静かな暴力とは対照的に、深作欣二監督直系の切れ味の悪い大ナタで力任せにぶった切るような荒々しくエグい描写が、とてつもないリアルさで観客に襲いかかる。一匹狼として生きるためにヤクザと同化し、悪事に加担する大上の姿はにわかに受け入れがたいものがあるが、それを支えている信念の純粋さと、その精神を見事に受け継ぐ日岡の姿は感動に値する。この点は東映の実録ヤクザ路線にも、その前の任侠映画・股旅・時代劇にもなかった新たなポイントで、かつて東宝の黒澤明監督がデビュー作『姿三四郎』から遺作『まあだだよ』に至るまでこだわり続けた、師匠から弟子への「継承」を想起させるものとなっている。(丈)