第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
実母から凄惨な虐待を受け続けて育った女性が、中年となり、幼い時に死に別れた父親の遺骨を探して娘と共に台湾へ向かう。母と父の過去を通して、母と自身に向き合っていく……。
愛情の示し方を知らずに暴力を振るう豊子と、そのはけ口にされて育ったため愛情に自信が持てない娘・昭恵の二役を原田美枝子が見事に演じている。父の遺骨の行方を探すなかでルーツである台湾を訪れ、自分の娘・深草(野波)とのちょっとした言い争いから幼少期に母から受けた虐待をフラッシュバックさせる昭恵にまず気持ちを寄り添わせるが、終盤のある場面にて愛する者が離れていく際の豊子の叫びを耳にして、「愛されたことがないから愛し方がわからない」という負の構造を繰り返していることに気づく。
個人的には、深草がラストで見せるたくましさに昭恵が救われるシーンが大好きだ。たぶん、彼女はあの後にも一人でこっそりおばあちゃんのところを訪ねて行き、昔話を聞いて仲良くなったりするんだろうな、などと想像をふくらませたくなった。
本作は第8回映画祭 TAMA CINEMA FORUMのオープニング企画で上映し、平山秀幸監督と主演の原田美枝子氏をトークゲストにお招きした。(理)
在日韓国人3世の高校生(窪塚)が、親世代との関係、魅惑的な恋、親友の喪失、自らの将来に煩悶しながら、アイデンティティを確立していく物語。
第25回日本アカデミー賞において、宮藤官九郎が最優秀脚本賞、行定勲が最優秀監督賞を受賞した、青春映画の傑作。
主人公は、父親に仕込まれたボクシングを武器に、喧嘩に明け暮れる高校生・杉原。自分と向き合い、どこか刹那的に、熱く生きる杉原を、唯一無二の個性と存在感で演じた窪塚洋介が素晴らしい。杉原に大きな影響を与える女子高生、桜井を演じるのは、デビューまもない柴咲コウ。思慮深く杉原と向き合っていく桜井を、丁寧に演じた。そしてこの作品といえば忘れてはならないのが杉原の父親を演じた山﨑努だ。破天荒な父親が、杉原と拳を付き合わせて真摯に対峙するシーンは、2000年代日本映画の最重要シーンのひとつと言っても過言ではない。
公開当時、登場人物たちと同世代だった私にとって『GO』は、自分と主人公たちの青春時代の姿を重ねて胸を熱くした思い入れのある作品だ。しかし、この作品が描くのは、若者特有の悩みやもどかしさだけではない。偏見や差別。ステレオタイプ。悔しいけれど、20年が経った今なお、大人になった私たちも、この作品から改めて学ぶべき課題は多い。(な)