第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
夏見富士子は一念発起し愛知から上京、幼い頃からの夢だったウエディングプランナーの道へ進むため、東京で働く弟の一鷹のマンションに居候する。念願の仕事に就いた彼女は多忙ながらも充実した毎日を送り始めていたが、新型コロナウイルスが世界中を席巻し、ウエディング業界にも大きな影響が現れ始める……。
東京、川沿い、長い夜。どこにでもいる姉弟の、誰よりも特別な一年半の物語。
「強い人だけが生きていける社会なんて嫌だ」、企画を練っているときに出てきた言葉です。コロナ禍の日本はますます格差が広がり、生きていくだけで大変な世の中です。主人公の富士子も、そんな社会の中で家に閉じこもっていきます。逃げたくなる時もたくさんあるけど、逃げた自分も自分だって受け入れて、そこからまた始めればいい。そんな風に思える社会になって欲しいです。
1993年生まれ、神奈川県出身。監督作品『マイ・シェアメイト』(2017年)では変化し成長していく若者たちをクィアな視点で描く。『ペールブルーがかさなる』(19年)では「働くこと」をテーマに社会のなかで不器用に生きる人々を誠実に見つめている。近年は映画だけでなくMV、広告映像など幅を広げて精力的に活動している。
高級住宅街にそびえ立つ派手な一軒家は亡くなった父の富の象徴だったのかもしれない。経済的に成功した一家が、母親の死によって苦しくなり家を失うことになった。久しぶりに入る実家には、あったはずの風景がなくなっていた……。失われた空間のなかでそれぞれの記憶が少しずつ蘇る。一枚のエコー写真をきっかけに、この一家の根底にある大きな問題が浮き彫りになっていく。
消費社会で消費されてしまった没落一家の懐かしくも切ない体験記です。四人姉妹それぞれのキャラクターと生々しい会話劇をお楽しみ下さい。今の日本社会にとって大事な問題である、現代社会に生きる女性たちが直面している“男女格差”や、日本社会で生きて行くなかでのジレンマをテーマにしています。一家のアルバムを覗き見していただけたら幸いです。
1991年生まれ、東京都出身。早稲田大学国際教養学部に入学後、大学内でスカウトされ映画『元気屋の戯言』(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2012年出品作品)で俳優デビュー。カタール留学を経て、イトーカンパニーに所属し俳優として活動を開始。大学では映画ゼミを専攻し、短編映画『ハルーシネイト』で卒業。21年に映画『四人姉妹』を脚本・監督・出演。
2020年夏。少し人通りの戻り始めた東京の「英会話カフェ」に、とある男女が参加する。仕事や経歴など嘘をついてささやかな承認欲求を満たす女性、ミキと、渡米を制限されている俳優志望の青年、健二。二人は意気投合し、共に「別人になりきって英会話カフェに参加するゲーム」に興じる。ゲームのルールはふたつ。「お互いの人生に立ち入らない」ことと、「日本語では嘘をつかない」こと。
2020年、コロナ禍の東京を舞台にして、確かに社会を映しながらも魅力的で可愛らしい「他愛のないラブコメ」を作ることができたら。そのこと自体がこれからの世界へのささやかな希望と楽観のメッセージになりうるのではないか。この時代を生きるクリエイターとして、少しだけ、そんな願いを込めました。撮影から1年たった今の世の中に、本作が少しでも清涼剤となってくれることを願っています。
1986年生まれ、滋賀県出身。フリーランスで映像制作を行う傍ら「Tick Tack Movie」名義で活動。主な作品に『現実拡張スマホ仮面』シリーズ、『パラレルワールド・シアター』など。
大好きだった彼氏に突然振られ、ボロボロになった主人公・桜井さつき(27歳)。失意のなか、さつきは道端にいたお地蔵さまに「どうか私を幸せにしてくれる男を、見極める目をください!」と懇願する。すると突然、世の中の男の顔が「物件の間取り」に見えるようになって……!?
結婚すれば、彼氏がいれば、理想の条件に合う人を見つければ、人は幸せになれるのか?これは、運命と思える居場所を見つけるまでの、さつきの物語。
20代も終わりに差し掛かり「こんなはずじゃなかった」と思うことが多くなりました。ただ、「どんなはず」になれば、この心の穴は埋まるのか。もし、私の他にもこのような気持ちを抱えている人がいるのならば、その人たちが、すがすがしい朝を迎えられますように。そう思って、この映画を作りました。観てくださった方の心のなかに、眩しい朝日が差し込んでくれたら嬉しいです。
1992年生まれ。慶応義塾大学に入学後、「創像工房in front of.」に所属。映画制作を始める。大学卒業後は出版社で漫画編集者として働きながらMOOSICLAB上映作の『テラリウムロッカー』、『さつきのマドリ』を監督。初の長編監督作となる宮沢氷魚主演作『はざまに生きる、春』の公開を控えている。