第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
日本で難民申請を続けるトルコ国籍のクルド人、オザン(18歳)とラマザン(19歳)。「仮放免許可書」を持つものの、立場は非正規滞在者、住民票もなく、自由な移動や、働くこともできない。社会の無理解によって教育の機会からも遠ざけられている。いつ入管施設に収容されるか分からない不安を常に感じながらも、夢を抱き、将来を思い描く。
本作の1シーン、「他の国行ってよ、他の国」……入管職員の浴びせた高圧的な言葉は、観ているこちらまでゾッとするほど冷淡な響きだった。
2021年5月、入管の収容者に対する非人道的な行為や環境を問題視する世論の高まりを背景に、入管法改正案は事実上の廃案となった。しかし、本作に登場する人々が置かれている過酷な状況はなにも変わらない――。
「難民条約」を批准しながら難民認定率が1%にも満たない日本。救いを求める人びとに対する差別的な仕打ち。希望を奪っているのは誰か? 救えるのは誰か?
5年以上の取材を経て描かれるオザンとラマザンの青春と「日常」。そこから浮かび上がるのは、救いを求め懸命に生きようとする人びとに対する日本の差別的な仕打ちだ。彼らの希望を奪っているのは誰か? 救えるのは誰か? 彼らだけの「自己責任」にしないためにも、社会の仕組みそのものを変えていく必要がある。その力になるのが、私たち市民の声のはずだ。
1980年生まれ、東京都出身。2006年、ドキュメンタリージャパンに参加。東部紛争下のウクライナで徴兵制度に葛藤する若者たちを追った「銃は取るべきか」(16年・NHK BS1)や在日シリア人難民の家族を1年間記録した「となりのシリア人」(16年・日本テレビ)を制作。本作の短編版『TOKYO KURDS/東京クルド』(17年・20分)で、Tokyo Docsショートドキュメンタリー・ショーケース(17年)優秀賞、Hot Docsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭(18年)の正式招待作品に選出。