第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多様な音楽との邂逅を経て音響とリズムの進化を遂げた最盛期のトーキング・ヘッズを、後に『羊たちの沈黙』を撮ることになるジョナサン・デミが捉えた画期的なコンサート・フィルム。デミの天才的で美しい映像表現と、バンドの爆発力で心躍る刺激的な音楽に溢れる。1983年12月にLAで行われた3回のライヴを撮影し、収録。
びっくりするほど簡素な舞台上で、ラジカセのビートに合わせバーンが弾き語りで歌い上げる “Psycho Killer”から始まる本作。その後、凝った舞台演出や多彩なバンドメンバーも加わり、ステージは次第に熱を帯びていく。
縦横無尽に動き回る演者たちを俯瞰的に映す『アメリカン・ユートピア』に対し、本作はメンバーにズームインしてじっと撮り続ける長回しカットが多い。ライヴ自体の構成も見事だが、高揚した彼らの表情を逃さず捉えた映像から、当時最盛期であるトーキング・ヘッズの凄まじいパワーを感じる。またこれは『アメリカン・ユートピア』にも言えることだが、どこか心地悪い心情や社会などを語る歌詞は、未だにどんよりしたムードが漂ういま聴くことで、より痛切に私たちへ響いてくる。
そして今回は、全国各地で爆音映画祭などを企画しているboid様に協力いただき、爆音上映が実現した。心地よい音に身を委ねるつかの間を、共に楽しんでほしい。(バ)
1952年生まれ、スコットランド出身。大学の仲間とトーキング・ヘッズを結成し77年にアルバムデビュー。革新的な楽曲で注目を集めたが、91年に解散。81年よりソロ活動を開始し、共作も含め精力的に活動。また『ラストエンペラー』(87年)で坂本龍一らと共にアカデミー賞作曲賞を受賞。その後も数々の映画へ音楽を提供する。その他『デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー』(86年)などの監督、エッセイなどマルチに活躍。