第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
永山公民館(多摩市公民館)
関戸公民館(多摩市公民館)
28歳の会社員ケナは、生まれ育った韓国に嫌気がさしている。2時間もかかる通勤に単調な業務の連続、労働者階級の家族、長年交際している恋人の裕福な実家との亀裂。そんな日々に疲れ、将来への不安を抱いている。一念発起したケナは、本当の“しあわせ”を求め、仕事、恋人、家族、故郷、すべてを捨てて単身ニュージーランドへ移り住む。そこで、かけがえのない友人との出会いや新しい生活を得たケナは、自分の居場所を見つけていく……。
昨年の釜山国際映画祭のオープニング作品に選ばれた最新作。
作家チャン・ガンミョンのベストセラー小説を原作とするこの青春映画は、Z世代の試練と苦難を描いており、ロマンチックなコミットメント、社会における女性の地位、階級間の緊張、マックジョブ、「教育熱」、親の期待の重さといった問題を痛々しいほどリアルに扱っている。
そんななかでも新しい文化に適応し、偏見を克服しながら自分の道を探そうとするケナの人生との向き合い方に共感し、小さな励ましをもらえる。
主演のコ・アソンは2004年に子役としてデビューし、ポン・ジュノ監督の『グエムル—漢江の怪物—』『スノーピアサー』に相次いで出演して演技派俳優という評価を得ると共に、強烈なエネルギーと存在感で賛辞を受けてきた。
子役のころから長年さまざまな役を演じてきた彼女が今だからこそ演じられたキャラクターはとにかく素晴らしい。(飯絢)
1977年生まれ。 韓国映画アカデミー撮影専攻卒業。長編デビュー作『十八才』(2009年)でバンクーバー国際映画祭、ペサロ国際映画祭、ソウル独立映画祭などで受賞し、その後『眠れぬ夜』(12年)は全州国際映画祭大賞および観客賞、エジンバラ映画祭、ナント三大陸映画祭などで受賞。日本の奈良を舞台に撮影した日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』(14年)は、釜山国際映画祭、ムジュ山里映画祭、韓国評論家協会賞、イタリア・アジアティカ映画祭などで受賞し、韓国独立映画協会の「今年の独立映画」に選ばれる。また、ムジュ山里映画祭プロジェクトである『月が沈む夜』(20年)の共同監督、TVINGオリジナル6部作TVシリーズ「怪異」(22年)を監督、濱口竜介監督の著書「カメラの前で演じること」(22年)の韓国語版出版も手がける。ほかに、映画『5時から7時までのジュヒ』(22年)、釜山国際映画祭開幕作に選ばれた『韓国が嫌いで』(23年)、アマチュア俳優たちの演技ワークショップを扱った映画『最初の記憶』(23年)など。今年10月11日〜13日にはソウル・アリランシネセンターにてチャン・ゴンジェが手がけた短編映画を含む全11編を上映する“チャン・ゴンジェ展”が開催された。
1963年生まれの音楽家/文筆家/大学講師。音楽家としてはソングライティング/アレンジ/バンドリーダー/プロデュースをこなすサキソフォン奏者/シンガー/キーボーディスト/ラッパーであり、文筆家としてはエッセイスト&批評家であり、映画やテレビの劇伴も多い。「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「ラディカルな意志のスタイルズ」「菊地成孔クインテット」リーダー。2021年、自らの生徒と共に、ギルド「新音楽制作工房」を立ち上げる。24年には結成20周年を迎えた菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールで10年振りのニューアルバム「天使乃恥部」をリリース。