本プログラムは、大野大輔監督の劇場未公開新作『辻占恋慕』の上映とゲストトークでいち早く作品の魅力に迫ろうというものですが、第18回TAMA NEW WAVE(2017年)でグランプリ・ベスト男優賞・ベスト女優賞の3冠に輝いた『ウルフなシッシー』の大野監督を「お帰りなさい」と心から歓迎したいと思い企画しました。トークはアーカイブ配信もしてますが、ネタバレの心配は無用です。むしろ観た方はもう一度、未見の方は劇場で観たくなる話題がいっぱいなのでぜひ視聴してみてください。このレポートでは発言ポイントをお伝えいたします。
大野監督が語る『辻占恋慕』
- ・当初から青春三部作を構想。
- ・テーマは、『さいならBADSAMURAI』が青春の暴走、『ウルフなシッシー』が青春の停滞、『辻占恋慕』が青春の終わり。
- ・『辻占恋慕』は、元々音楽映画つくってみたいと思っていたところ、MOOSICLABの別企画をやりたいとのオファーがあり実現。
- ・タイトルは、辻占売りの女の子が橋の下で別れた恋人を待っているという短歌があって、それにふんわりとしたイメージが生まれ、「辻占」と「恋慕」を合わせたみたいな感じでできた。
早織さんが語る「私はいかにして月見ゆべし(早織さんの演じるシンガーソングライター:S&W)になったか」
- ・友人の監督からは、音楽映画をやりたいってときに、ギターを弾いたことがないひとにS&Wの役を依頼することが無謀、受ける方も無謀だと。
- ・当初、本作のプロットがとてもおもしろく、大野監督のワードチョイスやアーティスト名月見ゆべしも気になり、この役を演じたいと自分の心がまず動き出してしまったので、弾けるか弾けないかまで考えてなかった。
- ・音楽は好きだけど、歌は自信があるわけではなかったので、ただひたすら役を演じるために一生懸命練習したのは確か。
- ・嘘をつかないように自分を必要以上に大きく見せないようにというのがゆべしになれるのかなと思って演じるうえで大切にしたこと。
- ・ギターは、2019年のはじめにお話をいただいてすぐにゆべし演じるなら練習しないとということで、ギターの先生も自分で探してと勝手に走ったかんじ。
- ・西山さんに書いていただいた曲は(主題曲「辻占恋慕」の他、劇中で「獣」、「サヨナラナンマイダ」、「雨の日」)すべて好き。その中で少し特別なのは「雨の日」。よく行っていた音楽喫茶の店主さんに聴いてもらったら、私のパーソナルなものに合っているのは「雨の日」だと。自分とぴったり合っているのかもしれない。
西山小雨さんが語るS&W早織さん
- ・普段弾き語りをしながらピアノとウクレレを使って演奏しているが、主人公月見ゆべしがギターを弾くことから、初めてギターを使って曲づくりをした。
- ・早織さんに直接会って、早織さんという存在が月見ゆべしになるっていうときにどういう言葉がでてくるんだろうっていうのが根底にあったので、今回の曲はわたしの曲ではなくって月見ゆべしの曲。早織さんだからできた曲なのでありがとうと言いたいですね。
- ・早織さんは、コロナで撮影が延びて練習が積み重なったこともあり、シンガーとして熟成され、映画を見ていると本当にシンガーだと思います。私は早織さんに毎回会うたびに次のライブはいつですかとお伺いしてます。
- ・一番好きな曲ですが、私も「雨の日」。レコーディングのときにボロ泣きしてしまって。「ああ私はこの映画をやれて本当によかった」って思いました。
川上なな実さんが語る西園寺琴美(川上さんの演じる演歌歌手)の歌
- ・(劇中歌うの「庭の千草」と知って)びっくりしましたよ。演歌歌手と聞いていたので、民謡だったので。
- ・結構練習しました。演歌歌手のニュアンスも出しつつということなので、ボイトレにも行きました。
- ・歌詞がステキで壮大で、桜が満開の季節で最高のシチュエーションだったので、自然とともにその力を借りて気持ちよく恋心を伝えるような気持ちで歌ってみました。自分の思うように最終的には迷いなくこれが私の「庭の千草」という感覚で歌えました。
- ・コロナ禍があって中断してからの撮影で、自然とともに生きるとかそういうことを考えて撮影現場に臨めたので、感慨深かったし、すごく好きな曲になりました。
濱正悟さんが語るあのシーン
- ・ああいうプレイしたことがないので、あれをオファーしてくる監督も引き受けた僕も無謀。
- ・事前に参考動画を監督からいただきましたが、現場入ってから作った感じ。
- ・イメトレして現場入って、鏡貼りのライブスタジオでひとりで練習してました。
- ・15takeやりました。
- ・あれをダンスと言っていいのかわからないけど踊った経験は活きたのかもしれないですね。
大野監督が語るクライマックスシーン
- ・クライマックスとしてはああいう形で終わらせようと当初から想定。
- ・自分なりに青春ってなんだろうって考えたら、他人には理解しがたいもの、他人の想像の範疇を超えて、端から見れば逆ギレみたいなもんですけど、それも青春なんじゃないかと。
- ・当初からアメリカン・ニューシネマが好きだったのでそういう余韻が残るものを撮りたいと思っていたので、ああいう形に落ち着いた。
ご来場いただきましたお客さま、ゲストの皆さま、関係者の皆さま、TAMA映画フォーラムの仲間に御礼申し上げます。TAMA映画祭は、ゲストをお招きしての上映プログラム、若手作家の登竜門「TAMA NEW WAVE」、映画ファンの立場から表彰する「TAMA映画賞」の3つの軸から成る唯一の市民映画祭です。だからこそ「TAMA NEW WAVE」出身の監督さんの作品を映画祭で上映させていただいたり、「TAMA映画賞」にお迎えできることは私たちの望みであり何よりも嬉しいことなのです。今後もそのような「お帰りなさい」と言えるプログラムを実施して参りたいと思います。
リンク:
プレヴュー「大野大輔監督『辻占恋慕』」 | 第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM