第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
今年は初めて指定席制をとったため、例年のように朝から長蛇の列ができることはなくなり、一抹の寂しさも覚えましたが、それでもロビーではパンフレットや映画祭関連グッズを求める長蛇の列ができ、授賞式らしい華やかな賑わいがありました。
『ドライブ・マイ・カー』上映後、授賞式のセッティングが整い、いざスタート。
トップバッターは最優秀新進女優賞の伊藤万理華さん。マントを纏ったような個性的な衣装で登場され、壇上がひときわ明るくなったように感じられました。「15歳でデビューした際、映像の世界で活躍していきたいと思いましたが、10年後にこうして賞をいただけて嬉しい。映画を未来につなげていきたいです。」と前を向いて語ってくださりました。お二人目の三浦透子さんはビデオメッセージをくださり、「これからも丁寧に素直にお芝居に向かっていきたいです。」と抱負を語ってくださりました。
続いて最優秀新進男優賞では、金子大地さんが「北海道出身なので、北海道を舞台にしたいい作品を残したい」と地元に対する思いを語ってくださりました。藤原季節さんは受賞作品『のさりの島』の「のさり」と言うのは良いこともそうでないことも天からの授かりものであるという説明された上で、「のさりました!」とトロフィを掲げられて舞台となった天草の方々に御礼する姿が印象的で、山本起也監督もお祝いに駆けつけてくださりました。
最優秀新進監督賞では、『サマーフィルムにのって』の松本壮史監督は伊藤万理華さん、金子大地さんと3人揃っての受賞を喜んでくださり、壇上アクリル板を挟んで3名並んだなかで、「二人のラストシーン1カットに込める想いや迫力が想像を超えるもので素晴らしかった」と絶賛されていらっしゃいました。藤元明緒監督は「8年前ミャンマーで占って貰った際、ミャンマーの方と結婚するということと、43歳で世界的に有名な監督になると言われ、前者は当たったので後者も実現するよう頑張っていきます」と力強く語られました。
特別賞では、『いとみち』の横浜聡子監督と主演の駒井蓮さんが登壇されました。駒井さんがこの映画のために1から津軽三味線を始めて撮影に間に合うか心配だったとおっしゃったのに対して、「駒井さんはじょっぱり(負けず嫌い)ということに気づいていたので、必ずや成し遂げてくれると思っていました」と語ってくださり、お二人の絆の強さを感じさせてくださりました。『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督は「恋愛映画を撮るということは恋を描くだけではなくその背景にあるものもひっくるめで描いているので、このコロナ禍のなかでいろいろな見方をして貰えたのかなと思っています」と反響の大きさを分析してくださりました。
最優秀女優賞では、まず有村架純さんが「(『花束みたいな恋をした』で土井監督、脚本の坂元裕二さんと再びお仕事されたことに関して)おこがましいですがお二人には本当に心から信頼を寄せているので、その方々と時間を共有させていただくのが幸せでした。」と信頼関係を語られました。尾野真千子さん「(『茜色に焼かれる』の現場に関して)コロナ禍で普段の現場の半分くらいしか人がいない、一人で全部やらないといけない状況において、心が本当に一つになっていい作品が生まれたんだと思います。」と感慨深く語って下りました。
最優秀男優賞では、菅田将暉さんが受賞コメントを述べた後、司会者から「プライベートでもおめでたいニュースが入って参りました。おめでとうございます。」と挟むと会場が祝福の拍手に包まれ温かい雰囲気になりました。その後、土井監督、有村架純さんと3人で『花束みたいな恋をした』の好きなシーンや本作が共感を呼ぶ理由について語り合ってくださりました。役所広司さんは「映画を観てくださったお客さんのおかげでこんないい賞をいただけたと思っています。ありがとうございます。日本中の映画祭が映画を支えてくれているということを身に染みて感じます。30年、40年と映画祭を守っていただけると幸せです。どうぞよろしくお願いします。」と映画祭を運営する者に身に余る言葉を頂戴しました。
最後の受賞は最優秀作品賞。『あのこは貴族』の岨手由貴子監督は「富裕層を描いた作品にもかかわらず現場は過酷な状況で、そのなかでワンカットを信じてやるしかない、これが監督として最後のカットになるかもしれないという思いのなか撮った作品で受賞出来て嬉しい。」と喜びを語ってくださりました。『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督はビデオメッセージをくださりましたが、代理でご登壇の山本晃久プロデューサーに「ビデオメッセージの時はテンションが低かった気がするので、改めて手紙を書きます」との伝言があり、山本プロデューサーが改めて手紙を朗読されました。
楽しかった時間もあっという間に終わり、緞帳がいったん降りた後、記念撮影の席の並びになり、受賞者一人ひとりがカーテンコールで袖から登場して、記念撮影が行われました。ご登壇者、観客、スタッフの映画愛に包まれて、暖かい雰囲気を共有できて幸せでした。
2年間TAMA映画賞授賞式は府中市のご厚意で府中の森芸術劇場どりーむホールで開催させていただきました。この会場でたくさんのよい思い出ができました。ありがとうございました。来年第14回TAMA映画賞授賞式は改修工事が完了するパルテノン多摩に戻る予定です。どうぞご期待ください。