第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
こちらのプログラムでは映画の新しい可能性を感じさせる2作品の上映と『ゾンからのメッセージ』舞台挨拶、両作品関係者を迎えてのトークを行ないました。
舞台挨拶では主要キャスト6名と助監督の石川貴雄さんが、全員が裏方も経験して作り上げたこの映画の特殊な成り立ちを語ってくださり、出演者の皆さんも作り手側の愛情を持ってこの映画を届け続けていることが伝わってきました。
トークでは、『わたしたちの家』の清原惟監督、批評家で本作の配給も行なった佐々木敦さん、『ゾンからのメッセージ』れみ役の長尾理世さん、両作品に出演している素敵な声が印象的な律子さんが登壇し、それぞれ他作品についての感想を伺いました。
清原監督は両作品にいくつかの共通点を見いだし、女性同士の「名前のつけられない関係」について言及しました。家族でも親友でも恋人でもない、でも親密な関係—『わたしたちの家』においては記憶を失くしたさなと彼女を家に招き入れる透子の関係がそうで、『ゾンからのメッセージ』のよるベなさを感じさせるあきらとバーのママみちこにも近いものを感じた、と。みちこ役の律子さんもそれに大きく頷いていました。
佐々木敦さんは両作品の類似点として「こちら側と向こう側の話」であることを挙げ、「向こう」があることで「ここ」がどういう所なのか?を意識することになるという視点の面白さについても指摘がありました。
さらに両作品の制作過程の話となり、『ゾンからのメッセージ』は深田晃司監督によるフェイクドキュメンタリーの企画からスタートしたという意外な話も飛び出しました。鈴木卓爾監督は作品内の劇中劇を撮る監督という設定だったとか。いかに当初の企画から遠いところに着地したのかがわかり、長い旅路であったことが伺い知れました。
Q&Aコーナーでは、「『わたしたちの家』の印象的な家はどこで撮影したか?」との質問があり、横須賀にある元商店でイベントなどで公開していることも明かしてくださいました。現在も映画のままの家を見ることができるようです。
様々な方面に話題が広がり、映画の世界と同様に想像力が広がっていくような楽しいトークとなりました。これからも「名前のつけられないような」新しい種類の映画の誕生を楽しみにしています。