作品上映の後、原一男監督をお迎えしてトークを行いました。途中休憩を挟んで3時間30分を超える作品上映後、さらに90分立ちっぱなし、しゃべりっぱなしという異例のプログラム。
この映画は、石綿産業が発展していた泉南地域でいわゆるアスベスト関連疾患になった住民やその家族・遺族が国を相手取って起こした8年にも及ぶ裁判の記録。登場するのはほとんどが自分と周りの幸せのために生きている「生活者」、つまり原監督がこれまでカメラを向けてきた、生活困難者などの他人の幸せのために過激な人生を送っている「表現者」とは全く異なる普通の人々でした。
監督ご自身も「普通の人を取って面白い映画になるのだろうか」と不安を感じられながらの撮影で、実際、病状が悪化して深刻な状態になった患者さんを撮ることはなかなか承諾してもらえなかったそうです。そういった撮影や編集の試行錯誤を通じ、昭和の過激な生き方は今はなく、普通の「生活者」が権力から虐げられているきつい時代が平成であり、その中で「自分たちが怒らないでどうするんだ」という強いメッセージが重く響きました。
今回はお客様だけでなく、事前にお渡しした映画祭スタッフからの質問にもお答えいただき、監督のドキュメンタリーにかける熱意を浴び続ける充実した時間となりました。
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【C-10】平成の終わりに原一男が伝えたいこと | 第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM