第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
東映動画初期の代表作のひとつであり、第1作『白蛇伝』第2作『少年猿飛佐助』に続きヴェネチア国際映画祭で連続受賞している作品である。原作である手塚治虫の漫画「ぼくのそんごくう」を元にアニメーションの西遊記がつくられることとなった。また、作品の製作面でも手塚治虫が大きく関与した。その後はアニメーションの世界へ積極的に乗り出し自らのプロダクション(虫プロ)を設立することになる。さまざまな野心的な試みが行われることで西遊記は日本のアニメーション界を大きく展望させた作品のひとつとなった。作中のキャラクターはみんな愛らしく、とくに女の子猿りんりんの健気で純粋で献身的な様子は時に胸打たれ、涙を誘う。映像は古いが現代のアニメーションを見慣れた人には新しく、そしてどこか懐かしい感覚に浸れる作品である。西遊記は日本人にとってもっともなじみの深い物語のひとつではないだろうか。まだ西遊記を知らない子供から以前観たことのある大人まで、全世代を通して楽しめるアニメーションである。(北)
長編動画における初の色彩化、ワイド・スクリーンの導入などに連なるこの作品では、ゼログラフィ(原画をセル画に直接転写するシステム)が全面的に使用された。1965年頃から大量生産されたテレビアニメーションへと東映動画内における製作の比重が移りつつあるなかで、技術的な質の低下を懸念するスタッフの熱意もあり企画から完成までに3年半の歳月を要した。作画枚数は15万枚にも達するほどで、当時のスタッフがどれほど熱のこもった作品を作ろうとしたかがうかがえる。そんなスタッフのなかには今や日本を代表するアニメーション作家となった高畑勲や宮崎駿が加わっている。高畑勲は長編初監督を担い、宮崎駿は原画及び場面設計を担当している。『太陽の王子ホルスの大冒険』はこのジャンルの物語における定型を大きく逸脱しており、当時は批判の声もあったが、それがいかに斬新で躍動感あふれる作品であったかをうかがわせる。ユーモアやギャグを希薄にすることで他の作品との違いを表し人々の心に残るアニメーション作品を生み出した。(北)