第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
第11回TAMA映画賞にて新進監督賞を受賞された山戸結希監督特集として『溺れるナイフ』『ホットギミック ガールミーツボーイ』の上映後、山戸結希監督と両作品にキーとなる役で出演されているザ・ドレスコーズの志磨遼平さんをゲストに迎え上映後トークを行いました。
志磨さんから「受賞おめでとうございます」とのお祝いをうけ山戸監督がガッツポーズ。「これからもすべてを力にして映画を撮っていく所存です」とのコメントからトークがスタートしました。
それぞれ脚本・歌詞と言葉の創り方の話では、音楽をする者として、聴覚や音として言葉が発せられることを前提にして磨きをかけてきたかもしれないという志磨さん。言葉とシーンが連動していて言葉のみでは不完全であるという山戸監督。お二人の視点から語られ、手段は違えと根本は一緒であるということが印象的でした。
実は「山戸監督二本立て」であり「志磨遼平二本立て」でもある本特集。「志摩さんは世界の狭間に立つ・地球が滅びても存在できる」と話す山戸監督から、志磨さんへ「あと何本映画に出てくださいますか?」と聞かれると、「以前、映画100本撮るんで100本出てくださいと言われたのを真に受けているので、100本出ます」と返答。私たちはあと100本タッグが観られることを確認しました。
その後もカラオケは一種のスイッチ、ジャンルからの解放、志磨さんと同じくご自身の二本立てということで(!)駆けつけてくださった編集の平井健一さん、音楽の坂本秀一さんにも山戸監督や作品のエピソードをお話しいただきました。
なかでも、志磨さんが以前山戸監督について書いた文章を振り返りながら「山戸監督の「結希」の名前は映画を撮るためのようだ。スクリーンに向かって光が焦点を結ぶ。ものを作るっていう中には色々な気持ちがあるけど、誰かの希望に誰かのためにいつも作っているように思う。※」とお話しくださり共感せずにはいられませんでした。
来場者からの質問タイムでは「これから撮りたいと思っているものを教えてください」との問いに「生きている喜びを感じてもらえる作品を撮りたいけど、自分が本当にそう思わないと反映されないような気がして、迷宮入りしてしまう。本当の意味で笑顔にすることを真剣に考えたい。今生きていて、生きている観客に観ていただいて、私たちの映画がスクリーンに映って、二つの眼差しが向けられている。そのことをもっと真剣に考えなければいけないと思います」とお答えいただきました。
撮れば撮るほど撮りたいものが増える。未来に撮るべき映画は残されていて、過去の映画ではなく未来の映画が愛されなければならない。自分が頑張って糸を太くしていくから、一緒に登ろう。と話す姿から、今を生きることで未来を紡ぐ責任と、未来は不確定であり縛られないという自由への意思を感じました。
柔らかい雰囲気を醸すお二人からの真摯なお話を満員の来場者の方と共有出来たことは至福であり濃厚な時間となりました。
※ユリイカ2019年7月号「特集・山戸結希」に寄稿した志磨遼平氏の「ミーツ、そのあと。」