TAMA映画賞が全国的に知られるようになり、遠方からの来場者が増え、当日も日が昇る前から開場待ちの列ができるようになりました。授賞式には、大森立嗣監督、沖田修一監督、原恵一監督、大根仁監督、松田龍平さん、真木よう子さん、吉高由里子さん、中野量太監督、白石和彌監督、黒木華さんが登壇されました。
第5回TAMA映画賞授賞式を、受賞者のコメントから振り返りましょう。大森立嗣監督は、会場の観客の数に驚いたようで「今年は僕のために開催されているようだと思いました」とチャーミングに語られた後、「そんなに大きな映画をやっているわけではないですけれど、いい作品を作り、より多くの人に観てもらうことを今後も続けていきたいです。皆さん頑張っていきましょう」とコメント。沖田修一監督は「いろんな人に支えられて出来た作品だなと思っているので、作品賞受賞というのが一番嬉しいです」と喜びを語りました(沖田監督はずっと緊張していたそうで、吉高由里子さんが舞台袖で緊張をほぐそうとしていたとのこと)。
吉高由里子さんが「大人の女性として、流暢にお話しできるようになりたい。真木よう子さんのような素敵な女性になりたいです」と抱負を語ると、真木よう子さんは「これからも挑戦することをあきらめないで、女優として日々成長していけたらと思っています」と語り、観客を魅了しました。
                    松田龍平さんは、同い年である石井裕也監督について「監督の熱量がすごかったので、負けたくなかった」と熱い一面を披露しました。ロケ地から駆けつけた黒木華さんは、「高校時代に演劇をはじめたときは自分が映画の賞をいただけるなんて思っていませんでした。これからも作品を通してたくさんの方々に出会えるように、努力して自分を磨いていきたいと思っています」と語りました。
大根仁監督は『恋の渦』のキャスト9名を引き連れ登壇し、「誰も観ていない作品ですみません。日本一気の早いこの映画賞で選ばれると、今年はこのような作品を選んでおけばよいのかと今後の賞の参考になるので助かります」と客席を沸かせました。
					星野源さんに代わって『箱入り息子の恋』の市井昌秀監督が登壇。「療養中で好きな仕事が出来ずに悶々としていた時に受賞の知らせを聞いてとても勇気がわき、前向きの気持ちになれました」という星野さんのメッセージを読み上げました。
白石和彌監督は「今回の受賞を機に、"新人"は卒業」と語れば、中野量太監督は「またTAMA映画フォーラムに帰ってきたい(第1回 TAMA NEW WAVEグランプリなどの縁がある)」とお二人とも前向きなコメントを寄せました。
全国的にTAMA映画賞が知られていく一方で、第1回授賞式から引き継いでいるボランティアによる手作り感やアットホームさのためか、受賞者のチャーミングな一面に出会えることができた第5回TAMA映画賞授賞式でした。
-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-
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									 『さよなら渓谷』 
									大森立嗣監督、及びスタッフ・キャスト一同
									 
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									 極限の愛の形・人間関係のなかで、人間の持つ繊細さと力強さ、愛と憎しみ、罪と赦し、そして再生と希望を、スクリーンの中で言葉と沈黙と痛みをもって鮮烈に表現した。  | 
							
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									 『横道世之介』 
									沖田修一監督、及びスタッフ・キャスト一同
									 
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									 何気ない日常のできごとや些細な記憶、人間の優しさや愛おしさを心地良いテンポでユーモラスに描き、「世之介」に出会えたことで、自分もまた、誰かの人生に関わって生きているということの素晴らしさに気付かせてくれた。  | 
							
-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-
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									 『はじまりのみち』を通して木下惠介監督のヒューマニズムと信念を真摯な姿勢で現代に甦らせたことに対して 
									原恵一監督、及びスタッフ・キャスト一同
									 
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									 時代の波に翻弄されながらも、力を尽くして生きていく庶民の生活と、人間の醜さや美しさ、弱さや強さ、そして日本人の心を描いた木下惠介監督の世界観を真摯に表現し、時代を越えた人間愛を現代に甦らせた。  | 
							
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									 若者を熱狂の坩堝に巻き込んだ『恋の渦』のエンタテインメント性に対して 
									大根仁監督、及びスタッフ・キャスト一同
									 
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									 チャラチャラしているけれどなんとも憎めないキャラクターを生み出した若き俳優たちの熱演と、恋愛を軸にしたスリリングな脚本、そして目くるめくテンポで描き切った演出によって、堂々たるエンタテインメントを創りあげた。  | 
							
-本年度最も心に残った男優を表彰-
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									 松田龍平 
									『舟を編む』『探偵はBARにいる2』『北のカナリアたち』
									 
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									 『舟を編む』において、実直な青年の成長を内に秘めた情熱と共に体現し、言葉の大切さを言葉でないもので見事に表現した。年齢を重ねるごとに深まる魅力と、これからの日本映画界を担う俳優としての輝きに期待する。  | 
							
-本年度最も心に残った女優を表彰-
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									 真木よう子 
									『さよなら渓谷』『そして父になる』『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』『つやの夜』
									 
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									 『さよなら渓谷』において、女性としての尊厳を完膚なきまでに叩き壊され、生きることの絶望を味わいながらも、赦し、自己を立て直し、生き抜く生身の女性を繊細かつ深く豊かな表現力と洞察力で演じきった。  | 
							
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									 吉高由里子 
									『横道世之介』『真夏の方程式』
									 
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									 『横道世之介』において、お嬢様育ちの天真爛漫な少女から、時を経て愛おしくかけがえのない日々を振り返る成長した姿へと演じ分け、時の重みと若き日の記憶が人生を豊かにしてくれることを鮮やかに体現した。  | 
							
-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-
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									 中野量太監督 
									『チチを撮りに』
									 
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									 笑いあり、涙ありの小さな家族の物語でありながら、登場人物の明日に向かって生きていこうとする前向きな姿勢が<人生讃歌>として観客に元気と勇気を与えた。  | 
							
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									 白石和彌監督 
									『凶悪』
									 
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									 役者の力を最大に引き出し、容赦ない暴力描写と次第に暴かれる真実によって観客を震わせながら、何が悪で何が正義なのか、答えのない問いへのあくなき探究が日本映画に類を見ないバイオレンス作品を誕生させた。  | 
							
-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-
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									 星野源 
									『箱入り息子の恋』『地獄でなぜ悪い』『聖☆おにいさん』
									 
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									 『箱入り息子の恋』において、抑え込んでいた熱を爆発させる「箱入り男」の不穏な暴走と崩壊を瑞々しく好演した。今後も俳優のみならず声優や映画音楽など幅広く観客を魅了することを確信させてくれた。  | 
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									 池松壮亮 
									『横道世之介』『上京ものがたり』
									 
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									 『横道世之介』において、まるで作品中の人物としてずっと生きてきたかのように役柄にはまり、鮮やかな印象を残した。作品ごとに異なる魅力を発見できる俳優であり、これからどんな新しい顔を見せてくれるのか期待が高まる一方である。  | 
							
-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-
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									 黒木華 
									『シャニダールの花』『舟を編む』『草原の椅子』
									 
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									 ゆったりとした時間を感じさせる古風な雰囲気や文学的な気品を漂わせている一方で、時に明確な自己主張を行い、透明感溢れる演技のなかに役柄を際立ただせる魅力を兼ね備えている。  | 
							
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									 刈谷友衣子 
									『シャニダールの花』『中学生円山』『鈴木先生』
									 
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									 映画の世界観を的確に把握することで、非現実的なシーンにおいてもリアリティを与えるだけなく、観客のイマジネーションを高める力があり、これから映画界で高い存在感を示す期待を抱かせた。  |