過去2回の開催によって徐々に定着してきたこともあり、第3回TAMA映画賞授賞式はパルテノン多摩 小ホールがほぼ満席となりました。授賞式には、是枝裕和監督、永作博美さん、小西真奈美さん、光石研さん、深田晃司監督、前田弘二監督、二階堂ふみさん、古舘寛治さん、染谷将太さんが登壇。新藤兼人監督の代理として新藤風さんが登壇され、井上真央さんはビデオメッセージでの参加でした。
第3回TAMA映画賞授賞式を、受賞者のコメントから振り返りましょう。是枝裕和監督は、『奇跡』にも出演した故・原田芳雄さんを偲び、うっすらと涙を浮かべながら、「もう一緒に映画が作れないなと悲しい気持ちになりますが、原田さんに恥ずかしくないような作品をこれからも作っていけたらいいなと思います」と思いを馳せました。
新藤兼人監督に代わって登壇した新藤風さんは、「『グランプリはいくらもらえるんだ』と聞くので、『お金はないけど、名誉はもらえるよ』と答えると、『名誉でお腹はいっぱいにならないけど、気分はいいからいいか』と言っていました」と祖父とのほのぼのとしたやりとりを披露されました。
永作博美さんは「(撮影時期は出産直後で)休もうと思っていた時期だったので、出演するかすごく悩みましたが、(今では)避けずにやってよかったなと心から思っています」と語り、小西真奈美さんは「年齢と経験を重ねるごとに、このお仕事を愛おしく、また新鮮に楽しんでいる自分がいます」と想いを述べました。光石研さんは「今年で50歳になりましたけども、いつまでも映画の現場に携われるよう頑張っていきたい」と決意を表明していました。
二階堂ふみさんの「これからも自分らしく頑張っていこうと思います。来年は受験なので、一日一日を大切に過ごせたらいいなと思います」と現役女子高生らしい決意や、井上真央さんの「壁の高い難しい役でしたが、挑戦してよかったと思います。今後は恐れることなく大胆になって、壁にぶち当たりながら挑戦したい」とのビデオメッセージでのコメントが印象的でした。また、染谷将太さんから「以前にこの映画祭で、TAMA NEW WAVEという自主映画部門で賞をいただいたのが役者として初めて頂いた賞でした。商業映画をやるようになって、今度はこのような賞を頂けてうれしく思います」という嬉しいコメントもありました。
授賞式の様子がメディアを通じて好評となり、TAMA映画フォーラム実行委員会にとって確かな手応えとなった第3回TAMA映画賞授賞式でした。
-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-
『一枚のハガキ』
新藤兼人監督、及びスタッフ・キャスト一同
|
「今日はお祭りですがあなたがいらっしゃらないので何の風情もありません。」実際に妻から兵士に送られた一枚のハガキから、戦争への憎しみと共に生きることの大切さをユーモアを交えて瑞々しく描きだし、次世代に受け継ぐ豊かな実りを結実させた。 |
『奇跡』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同
|
子どもたちが抱く切実な願いとそれをかなえるための試行錯誤、そして訪れる現実との対峙を、希望をもって描き、<夢を見失ったかつての子どもたち>の背中を後押ししてくれる宝物のような作品を誕生させた。 |
-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-
日本映画界の至宝・故・原田芳雄さんと、最期にその情熱を注ぎ映画魂の宿った『大鹿村騒動記』に対して
故・原田芳雄さん、阪本順治監督及びスタッフ・キャスト一同
|
死してより一層、その存在の大きさを映画ファンの心に刻み込んだ原田芳雄さんと、最期に情熱を注いだ『大鹿村騒動記』の農村歌舞伎に魅せられた人々の喜怒哀楽を大きな心で包んだ人間ドラマの映画的な広がりに敬意を表して。 |
作品に寄り添い、重層的に盛り上げる岸田繁(くるり)の映画音楽に対して
岸田繁(くるり)
|
『まほろ駅前多田便利軒』『奇跡』において、登場人物に寄り添い、時に感情の趣を牽引し、あるいは作品に化学反応を起こして、作品をより重層的に盛り上げる映画音楽を創りあげた。 |
-本年度最も心に残った男優を表彰-
光石研
『あぜ道のダンディ』『毎日かあさん』『太平洋の奇跡』など
|
33年ぶり主演の『あぜ道のダンディ』で、憎めないオヤジの心情を、歌って踊って走って怒って、そして泣く・・・多彩な顔で見事に表現し、世代を問わず強い共感を呼んだ。 |
-本年度最も心に残った女優を表彰-
永作博美
『八日目の蝉』『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
|
(『八日目の蝉』において、)連れ去った愛人の子どもに対して、罪の意識を背負いながら理性よりも母性としての本能が勝って愛情が高まっていく様を全身全霊を傾けて演じ、その思いを残像として観客の脳裏に深く刻み付けた。 |
小西真奈美
『東京公園』『行きずりの街』
|
清楚な魅力も湛えつつ、時折見せる憂いのある表情や秘めた情熱を感じさせる佇まいは、はっとするほど観るものを惹きつけ、忘れられない存在感を残した。 |
-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-
深田晃司監督
『歓待』
|
閉塞感漂う現代日本社会の中で、映画と演劇の垣根を軽やかに越えてそれらを愉快に、シニカルに破壊して、刷新した日本社会像を創ろうと意気込む、野心的な大傑作を生み出した。 |
前田弘二監督
『婚前特急』
|
主演吉高由里子をはじめとする個性的なキャストを存分に活かし、単純ではない男女の心理をコメディ満載に描いて、笑えて楽しいエンターテインメント作品として仕上げた。 |
-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-
古舘寛治
『歓待』『マイ・バック・ページ』
|
映画のなかで類い稀なる飄々とした存在感で観客の意識を惹き付け、他の誰でもなく「古舘寛治」でしかできない独特の演技で役柄を演じ切った。 |
染谷将太
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』『東京公園』『あぜ道のダンディ』
|
作品によって骨太にも軽やかにも演じ分け、そこはかとない色気も漂わせつつも、どの作品においてもその場にふさわしい存在感を持ち得る演技力に対して。 |
-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-
井上真央
『八日目の蝉』『太平洋の奇跡』
|
(『八日目の蝉』において、)自らの生い立ちにぶつけようのない憤り、癒やされない傷を抱えながらも誰にも頼らず生きていこうとする芯の強さをしなやかにかつ清冽に演じた。 |
二階堂ふみ
『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』
|
才能がある故の苦悩、怒りをダイナミックに表現し、全編流れる歌同様にパワフル且つ個性に溢れて、次世代を担う輝きを放っている。 |