第2回から「最優秀男優賞」と「最優秀女優賞」が加わり、その年の映画界を網羅する賞としての形式が整いました。授賞式には、吉田恵輔監督、若松孝二監督、川口浩史監督、山本寛監督、大西信満さん、安藤サクラさん、忽那汐里さん、『告白』のスタッフ・キャスト一同を代表して川村元気プロデューサーが登壇。中島哲也監督、堤真一さん、寺島しのぶさん、金田哲さんはビデオメッセージの参加でした。寺島しのぶさんは、別日のプログラムに若松孝二監督とともに登壇されました。今回からキティちゃんが花束贈呈にかけつけてくれ、忽那汐里さんと安藤サクラさんは満面の笑みで花束を受け取っていらしたのが印象的でした。
この日、特に会場を盛り上げたのが『キャタピラー』で特別賞を受賞された若松孝二監督でした。「『キャタピラー』がヒットしたので、次回作も自分の好きなように撮るつもりです。そちらもぜひ観て下さい!」と熱く語りかけると場内は大きな拍手に包まれました。まだ小ホールでの実施でしたが、徐々に今の形に近づいている第2回のTAMA映画賞でした。
若松孝二監督は『実録・浅間山荘事件』の上映などで映画祭のゲストとしていらしたことがありましたが、第2回の映画賞で『キャタピラー』を特別賞に、主演の寺島しのぶさんを最優秀女優賞に選考させていただきました。ベルリン国際映画祭で『キャタピラー』が銀熊賞(女優賞)を受賞されていましたが、日本の映画賞とあまりご縁がないこともあって受賞を大変喜んでくださりました。少し怖いイメージもあった若松監督ですが、同じ赤いマフラーでご登壇され、常にほがらかでいらっしゃいました。映画祭オープニング上映の寺島さんとのトーク、授賞式共に満員の客席をご覧になって、「また、多摩映画祭をもうけさせちゃったな」と、ご機嫌だったのが何より嬉しかったです。トーク終了後に楽屋でおいしそうにビールをおかわりされながらいろいろなお話をしてくださったのですが、なぜかご家族の方が険しい顔。後で伺ったところ、映画祭直後に手術を控えていてドクターストップがかかっていたそうです。2年後の映画祭でもご登壇予定でしたが、不慮の事故でそれはかないませんでした。それから数年以上経った今も、若松監督の素敵な笑顔が昨日のことのように思い浮かびます。
-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-
『告白』
中島哲也監督、及びスタッフ・キャスト一同
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現代社会のドロドロした不条理な一面をえぐった刺激的な原作をはるかにスケールアップさせた衝撃的な映像が万人の胸に鋭利に突き刺さった。 |
『さんかく』
吉田恵輔監督、及びスタッフ・キャスト一同
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若いカップルにおきた三角関係を軸に、恋愛のなかで生じる「すれ違い」「思い込み」「独りよがり」等の身近なテーマを軽妙なタッチながら実に繊細に心理描写を描きこみ、強い共感を呼んだ。 |
-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-
若松孝二監督のまっすぐなインディペンデント魂に対して(『キャタピラー』)
若松孝二監督
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戦後意識が薄れつつある日本において、戦争の悲惨さを力強くストレートに訴える『キャタピラー』の人間ドラマの崇高さ・映像の力に敬意を表して。 |
-本年度最も心に残った男優を表彰-
堤真一
『孤高のメス』『ヴィヨンの妻』
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『孤高のメス』で、出世や名誉には一切無頓着で患者の命を救うことだけに執念を燃やす医師の姿を誠実かつチャーミングに演じきり、その生き様が観客の心に強く残った。 |
-本年度最も心に残った女優を表彰-
寺島しのぶ
『キャタピラー』
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手足を奪われた夫の欲求に嫌悪感を持ちながらも、世間に対する見栄を張りつつ母性愛で包み込む女性の包容力とたくましさを体現した圧倒的な演技に対して。 |
-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-
川口浩史監督
『トロッコ』
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陽のこぼれる森林の緑の美しさを背景に芥川龍之介の原作で描かれる「子供たちの時間」を台湾を舞台にすることで現代に鮮やかに甦らせた。 |
山本寛監督
『私の優しくない先輩』
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奇想天外な発想を鮮やかにフィルムに焼き付け、「こんな映像を観たかったんだ」と観客に想起させるたぐいまれなる青春映画を世に送り出した。 |
-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-
大西信満
『キャタピラー』
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戦争によって奪われた手足と甦る悪夢、それでも本能のままに「生きていかねばならない」帰還兵の苦しみと痛みを全身全霊で表現した。 |
金田哲
『私の優しくない先輩』
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うざい、むさ苦しい兄貴分になるところを、高い身体能力とキレのある演技で爽やかに演じきり、珠玉の青春ドラマに昇華させた。 |
-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-
安藤サクラ
『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『SRサイタマノラッパー2』『TORSO』など
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どの役柄を演じても、画面からその息遣いからワキガまで伝わってくるほどの存在感は若手俳優のなかで群を抜いている。 |
忽那汐里
『半分の月がのぼる空』『BECK』
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『半分の月がのぼる空』では透明感のある活発な少女でありながら自分の運命の儚さを悟っている影の部分をナチュラルに演じきった。 |