映画祭 TAMA CINEMA FORUMの会場として使用してきた「やまばとホール」が2009年3月に閉館。この年(第19回)から、パルテノン多摩をメイン会場として映画祭 TAMA CINEMA FORUMを開催することとなり、TAMA映画賞の創設を発表しました。
賞のコンセプトは「明日への元気を与えてくれる・夢を与えてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰する」こと。実行委員それぞれが手探りのなか、定員300名のパルテノン多摩 小ホールにおいて第1回TAMA映画賞授賞式が行なわれ、その歴史がスタートしました。
授賞式に登壇されたのは、西川美和監督、横浜聡子監督、八千草薫さん、北川悦吏子監督、高良健吾さん、満島ひかりさん、金澤美穂さんで、深川栄洋監督は代理の方が登壇されました。また、木村大作監督と渡辺大知さんはビデオメッセージを寄せてくださり、それぞれ別日のプログラムで登壇されました。
最大のサプライズは、授賞式当日が舞台の楽日のためご登壇できないとのお話だった八千草薫さんが舞台を終えて会場に駆けつけてくださったことでした。また、授賞式の最後には、北川悦吏子監督、横浜聡子監督、西川美和監督によるミニトークのコーナーを設けました。ここからTAMA映画賞の歴史が始まりました。
第18回の映画祭をもって映画祭立ち上げからメイン会場として使用してきたやまばとホールが閉館になり、第19回からパルテノン多摩をメイン会場として新たなスタートを切ることになりました。再スタートの起爆剤として、以前から開催したいと声が上がっていた映画賞立ち上げに取り組むことになりました。ただ、すでにヨコハマ映画祭や高崎映画祭など20年以上の実績を積み重ねている映画賞があり、後発の映画賞として同じことをしても映画業界から相手にされないだろうとの不安がありました。何か特長をもった映画賞として立ち上げたいと意見をだしあったところ、粋のいい、今、旬な方を表彰することを柱に据えたらとの声が上がりました。俳優さんで考えると、粋のいい、旬な方は経験豊富な方でも新人俳優でもなく、映画経験数年の俳優さんが多い。その方々を表彰するのにどのようなネーミングがよいのだろうと頭を悩ませました。「フレッシュ」「ニュースター」「隆盛」など、どれもしっくりこない、そんな折、何か学術賞のニュースで「新進気鋭」と言う文字が目に飛び込んできて、これだと思い、軸となる賞のネーミングが新進男優賞・新進女優賞・新進監督賞に決まりました。映画祭として作品賞は必須だろうと言う声と、それ以外に幅広い視野で映画界に大きな影響を与えた賞を加えたいとのことで特別賞。その5つの表彰で第1回映画賞を立上げることが決まりました。
TAMA CINEMA FORUMの特徴は市民をはじめとした一般人が運営を行っていることで、観客視点の映画祭を謳い文句にしています。第10回映画祭から行っている自主映画・インディーズを表彰する「TAMA NEW WAVE」がグランプリを観客及び実行委員による一般人の投票で選ぶスタイルをとっているのもそのためです。TAMA映画賞も同様に一般人である実行委員の合議もとに決定することにしましたが、一般人が選んだ賞を映画業界の方々が喜んでいただけるのかどうか不安がありました。観客視点の真摯な想いを受賞者に伝えるために、受賞理由の文面作成に思いの丈を込めようと、この作業に力を注ぎました。これは10回目を迎える今でも継続しており、この映画賞に存在意義を与える数少ない手段として注力しています。第1回の最優秀作品賞には、西川美和監督の『ディア・ドクター』と横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』の2作品を選考させていただきました。西川監督は前作『ゆれる』で多くの賞を受賞されていることもあり、まだ、立ち上げたばかりの映画賞の授賞式に参加していただけるか不安な面もありました。『ディア・ドクター』の配給会社アスミック・エースの方が長年映画祭に親身にご相談にのってくださっていて、この時も「新たな映画賞の立上げに協力したい」と製作のエンジン・フィルムをご紹介くださり、無事ご登壇いただけることになって胸をなでおろしました。そのうえ本作で特別賞を受賞された八千草薫さんも授賞式当日が舞台の楽日にもかかわらず、急遽、公演終了後に駆けつけてくださるという実行委員冥利に尽きる出来事もあり、無事第1回目の映画賞を終えることができました。
-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-
『ディア・ドクター』
西川美和監督、及びスタッフ・キャスト一同
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人間に対する奥深い洞察力に加え、社会問題、ユーモア、地方社会のありようを包み込んで普遍的な人間ドラマに昇華させた。 |
『ウルトラミラクルラブストーリー』
横浜聡子監督、及びスタッフ・キャスト一同
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この作品全編を貫くまっすぐな想いの力強さは、現代社会の閉塞感を超越した永遠の力がある。 |
-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-
八千草薫さんの演技に対して(『ディア・ドクター』、『ガマの油』)
八千草薫
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品のあるチャーミングな魅力がこれまで以上にスクリーンで輝いていたことに敬意を表して。 |
『劔岳 点の記』の撮影に対して(『劔岳 点の記』)
木村大作監督
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CGによる映像実現が大勢を占めるなか、大自然に真正面から挑んだ撮影で真実であることによる映像の迫力・ドラマの重みを十二分に体感させた。 |
-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-
深川栄洋監督
『60歳のラブレター』
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監督自身が30代前半ながら、団塊世代の恋愛ドラマを描き上げた演出力は本物である。 |
北川悦吏子監督
『ハルフウェイ』
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役者の息遣いが伝わってくるようなナチュラルで身近な高校時代の恋愛模様を透明感溢れる映像でヴィヴィッドに表現した。 |
-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-
高良健吾
『フィッシュストーリー』『ハゲタカ』『蟹工船』『南極料理人』
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出演作相次ぐ中、どの作品も確実に強い印象を残し、同年代の俳優のなかでひときわ抜きん出た存在感と演技力を見せた。 |
渡辺大知
『色即ぜねれいしょん』
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初出演、初主演にも関わらず、良い意味で力の抜けた自然な演技とフレッシュな存在感で作品を最後まで引っ張っていった。 |
-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-
満島ひかり
『愛のむきだし』『プライド』
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ヒロインを堂々と演じられる実力を持っており、大胆な演技のなかに、凛とした清らかさを放つ希少な存在感が素晴らしい。 |
金澤美穂
『容疑者Xの献身』『はじめての家出』『60歳のラブレター』
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年頃の女の子にありがちな言葉にできないもどかしい感情のもつれを体現し、スクリーン上での存在感を発揮した。 |