11月24日(月・祝)ベルブホール 第2部
※この作品は15歳未満の方のご鑑賞はできません
1996年夏、東京。AV監督の平野勝之は、不倫相手の女優・林由美香と北海道の礼文島まで野宿をしながら自転車で旅をするAV作品を撮ることになった。走行距離1,052km・41日間にも及ぶひと夏の記録。二人は、旅のなかで自分やお互いのことを見つめ直していくが……。
「あの夏ぼくらは、あの海にゆらめいていた」
そんな記憶が呼び起こされたのは、本作を通し、時を超えて多くの人と旅をしている解放感に包まれたからです。
もやもやしていた学生時代、ふとしたきっかけでタイに行き、自分が物語を歩んでいるような日々でした。街道沿いで食べたカオパットを超えるものにはまだ出会えていない。
また、劇中の旅人はいま何をしているんだろうと思いつつ、型破りな人ばかりの農家で朝から晩までひたすらキャベツを収穫していた夏も思い出し、立ちつくしてしまった。あんな夏はもうこないのかもしれない。
旅に疲れ果て、林由美香がもう帰りたいと泣きながら母に電話していた刹那、言い放たれた言葉の振り幅は清々しく、この人を撮るんだと愛しぬく平野監督の姿勢にもしびれる。どんな時でも心の底ではあなたが好きというシンプルな思い。人と向き合いたくない時こそ観て欲しい作品で、人は誰かを愛したい、愛されたい面倒くさい生き物なのだろう。
本作撮影時、監督が32歳だったことに驚き、どんな状況でも物語を撮れてしまう監督には、今後も人間そのものに迫ってほしいです。(内)
※この作品は18歳未満の方のご鑑賞はできません
6人のオトコたちが東京から仙台、青森を経由して札幌まで、バイクや車でレースをしながらテレクラやナンパ、各種出会い系を駆使して現地素人をゲットしていく痛快バトルドキュメント。果たして狂気のレースを制するのは誰なのか?知力、体力、人間力、すべてを注いで1番に挑む、熱きオトコたちの意地と名誉をかけた闘いが今、始まる!
追い詰められた時に聞こえてくる悪魔の声。逃げるのは簡単。困難にぶちあたっても、どこまで踏ん張れるか。壁を作るも壊すも自分次第。他人を笑っている暇はない。「おまえは鮮やかに踊れているか?」
本作が上映されたオーディトリウム渋谷は10月にひっそりと閉館されたが、場はなくなってもあの熱狂を分かち合った夜は生き続ける。街の風景が移り変わっても、躍動する人間をみたい、みたことのない日常の裂け目をみつけたいという思いは誰しも持っているものだ。
残された時間は思ったよりも短く、気づいたら思うように動かなくなる時が突然、訪れるかもしれない。日常はいつも慌ただしく絡めとられてしまうけれど、季節は巡り続ける。うじうじ悩む前に、まず現場に出て問題おきて傷ついてもぶちあたってみる。それによって自分のなかに芽生える生々しい感情から目をそらすな。ヤルかヤラナイかの人生なら、オレらはヤル人生を選ぶ!自分の人生、踊ったもの勝ちなのだから。
今後、関西・四国編や九州・沖縄編で西日本を駆け抜けるオトコたちもみてみたいようなみたくないような……(内)
ゲスト:平野勝之監督、カンパニー松尾監督、九龍ジョー氏(編集者/ライター)
1964年生まれ、静岡県出身。映画監督。アマチュア時代より8mmフィルムを中心とした映像を撮り続けPFFなどで高く評価される。90年『由美香の発情期』でプロデビュー。97年女優・林由美香との北海道自転車旅行を記録した『由美香』が劇場公開され大ヒット。いわゆる「自転車三部作」のひとつ『白 THE WHITE』(99年)を第50回ベルリン国際映画祭に出品。2011年、『監督失格』を公開。
1965年生まれ、愛知県出身。AV監督。87年、童貞でAVメーカーV&Rプランニングに入社。88年、監督デビュー。96年、V&Rを退社しフリーとなり、2003年、自身のメーカーHMJM(ハマジム)を立ち上げる。代表作として『私を女優にして下さい』、『テレクラキャノンボール』など。14年2月『劇場版 テレクラキャノンボール2013』が公開され大ヒット上映中。『劇場版 BiSキャノンボール2014』を15年2月に公開予定。
編集者/ライター。「KAMINOGE」「クイック・ジャパン」「CDジャーナル」「宝島」「水道橋博士のメルマ旬報」「シアターガイド」などの各誌で連載中。「キネマ旬報」にて星取りレビュー担当。著書に「遊びつかれた朝に――10年代インディ・ミュージックをめぐる対話」(磯部涼との共著/Pヴァイン)。編集近刊に「MY BEST FRIENDS どついたるねん写真集」、坂口恭平「幻年時代」など。
1998年に今回と同じ会場(ベルブホール)で上映した『由美香』を16年ぶりに上映し、2014年に日本列島を駆け巡った『劇場版テレクラキャノンボール2013』を上映しました。
2作品上映後、平野勝之監督、カンパニー松尾監督、進行役の九龍ジョーさんをお迎えして満員の観客が見守るなかトークを行いました。両監督の出会い、林由美香さんを巡る因果やとっておきの撮影秘話を語っていただき、両作品の不思議なつながりを味わいながら、会場は一体感に包まれていきました。
平野監督の「事態は最悪でも、こんなくだらないことをしたら最高」という言葉がとても印象に残りました。ヤル人生を選び、日常の裂け目を追い続ける両監督に向けて、トーク終了後には観客から大きな拍手が送られました。
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