11月30日(日)ベルブホール第2部
女優志望のアキは、夢叶わず、気付けば29歳。マジシャンの助手として、毎日催眠術にかかったふりをしているだけだ。日々人生に悲観してるうちに、アキは夢と現実の区別がつかなくなる。そんなカオスな世界のなかで、アキは自分の人生を前に進めるため、やがて父との悲しい思い出と対峙することになる…・・・。
TAMA NEW WAVEある視点部門での2年連続の作品上映に続き、2013年の第13回TAMA NEW WAVEコンペティションに『大童貞の大冒険』で入選した二宮健監督。卒業制作『SLUM-POLIS』に続き、間髪入れずに創り上げたのがこの『眠れる美女の限界』だ。二宮監督の作品では珍しく、この作品の主人公はアラサ―の女性。人生に迷える女性の心の閉塞感や揺れ動きを描き出し、二宮ワールドの新境地を開拓していると言えるだろう。次々に作品を生み出しているが、作りこまれた映像美や音楽の素晴らしさには目を見張るものがある。この作品の見どころは鮮やかな色彩美にあふれた映像とスピード感のある音楽で、主人公のぐるぐる揺れ動く感情を体験できるところだ。監督の作品からは作り手の楽しんでいる姿が伝わってくる。これからも素晴らしい作品をどんどん生み出し、映画界に新鮮さと驚きを与えてくれるに違いない。(舞)
2041年、南海トラフ大地震後の日本。復興の進んでいない地はスラムポリスと呼ばれ、事実上無法地帯となっていた。スラムポリスに住む青年ジョーとアスは、ある日絵描きの娼婦アンナと出会い、奇妙な友情で結ばれていく。3人はそれぞれの夢のために、暴力団の麻薬輸送車襲撃を計画するが、それを機に闇の抗争に巻き込まれていく……。
かつてこの怠惰な腑抜けの列島を強烈な暴走が駆け抜けた時代があった。梶芽衣子が、原田芳雄が、范文雀が、藤竜也が、地井武男が、安岡力也が、ケン・サンダースが、峻烈な炎を身にまとい、銀幕を縦横に蹂躙した。『野良猫ロック』。
そして平成26年、多摩の地に伝説の映像を凌ぐような新たな才能が舞い降りた。『SLUM-POLIS』!!『Apollo ChocolatE GIRL』、『大童貞の大冒険』と快調に映像を撃ち続ける俊才・二宮健が荒廃する近未来都市を舞台に、絶望的な日常から脱出しようとあがく3人の若者を描く。スピード感にあふれる展開、キレのある映像にわくわくしながら吸い寄せられていく。アベラヒデノブが切ない男の心の揺れを『大童貞の大冒険』とは打って変わってみせてくれる。これが卒業制作の作品とは信じられない。閉塞感を自らの手でぶち破ろうともしないこの列島の腑抜けどもに二宮健が叩きつける渾身の一作!!(竹)
ゲスト:二宮健監督、アベラヒデノブ氏、松崎ブラザーズ[松崎健夫氏(映画評論家/WOWOW公認・初代映画王)、松崎まこと氏(放送作家/映画活動家)]
1991年生まれ、大阪出身。大阪芸術大学映像学科在中。幼い頃から映画制作をはじめ、2012年、監督作品『大童貞の大冒険』がTAMA NEW WAVEをはじめ、国内の数多くの映画祭で入賞。14年、卒業制作『SLUM-POLIS』を完成させ、国内外の映画祭で上映。現在は東京を拠点に活動中。『眠れる美女の限界』『DAUGHTERS』なども監督。
ニューヨーク生まれ。関西育ち。大阪芸術大学卒業。監督として、卒業制作『死にたすぎるハダカ』がモントリオール・ファンタジア映画祭、福井映画祭グランプリ受賞。『めちゃくちゃなステップで』がSSFF2014・UULAアワード受賞。俳優として、第13回TAMA NEW WAVEゲストコメンテーター男優賞受賞(『大童貞の大冒険』(二宮健監督))。
映画評論家。WOWOW公認・初代映画王。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。映画・テレビ・ラジオの現場を経て、現在執筆業。「WOWOWぷらすと」(WOWOW)、「ZIP!」(日テレ)、「大谷ノブ彦 キキマス!」(ニッポン放送)、「I A.M.」(J-WAVE)へ出演中。共著「現代映画用語事典」(キネマ旬報社)ほか。映画検定1級。日本映画ペンクラブ会員。松崎ブラザーズのBの方。
1964年東京生まれ。早大卒。放送作家としてテレビで「博士の異常な鼎談」、「松嶋×町山/未公開映画を観るTV」、ラジオで「伊集院光 日曜日の秘密基地」、「荒川強啓 デイキャッチ!」などを担当した。現在は映画活動家とも名乗り、bayfmやFM栃木、ネット番組やイベントなどで映画深堀りトークを展開。プロモーションや製作なども手掛ける。また本年は「田辺・弁慶映画祭」のティーチイン司会を務めた。映画評論家松崎健夫とのユニット“松崎ブラザーズ”の“松崎A”としても活動中!
11月30日(日)第24回映画祭最終日のベルブホールにて、「二宮健監督特集 ―浪速発!新進監督が創りだす日本映画の新時代―」と題し、TAMA NEW WAVEにも縁の深い二宮健監督の新作自主映画『SLUM-POLIS』『眠れる美女の限界』の上映と舞台挨拶を行いました。上映後には二宮監督、両作品に出演しているアベラヒデノブさん、かねてより監督を応援している松崎まことさん、松崎健夫さん(松崎ブラザーズ)でトークを行いました。トークは大変暖かい雰囲気の中で行われ、笑い声が溢れる楽しい時間となりました。
アベラさんから見た二宮監督は「映画の撮影時にはいつもイメージが明確で現場ではあまりテイクを重ねないが、カット後の表情で納得するシーンが撮影できたのか分かる」とのコメントが。松崎健夫さんからは「この2作品の前に撮影した『大童貞の大冒険』から技術的にすごく進歩している。自主映画としては珍しく美術と音楽にかける予算の比重が高いのでクオリティが高いと観ているものに思わせる。」と賞賛の言葉が、松崎まことさんからは「これからはプロとして娯楽映画を撮って映画界を盛り上げてほしい」とエールが送られました。
二宮監督からはこれからの展望として「この2作品を続けて撮影した後、全く違うジャンルの作品を撮りたいと思い3本撮った。この2作品は日本映画の現在の流れの中でこういったものが必要ではないかと思えるものを手間暇かけて創った。今はまた大がかりな作品が創りたい!」と心強い言葉が。次々に勢い溢れる作品を生み出している二宮健監督から今後も目が離せません!
Copyright © 2000-2014 TAMA CINEMA FORUM. All rights reserved.