90年を時代背景に甘く切ない初恋の記憶をユーモラスにセンチメンタルに描いた台湾、韓国映画の特集。台湾のベストセラー作家・キデンズ・コー監督作品『あの頃、君を追いかけた』、韓国イ・ヨンジュ監督作品『建築学概論』は、誰の胸にもひっそりと残る初恋の喜びと苦い思い出、そして後悔を鮮明に思い出させてくれる秀作です。
12月1日(日) パルテノン多摩小ホール 第1部
You Are the Apple of My Eye
台湾中西部の町、彰化(しょうか)。高校生コートン(クー・チェンドン)と個性豊かな仲間たちは、将来のことを真剣に考えもせず、くだらない悪戯で授業を妨害する毎日を過ごしていた。成績優秀な女生徒チアイー(ミシェル・チェン)は、彼の勉強の面倒見役を仰せつかった。お互いに相手を疎ましく思いながらも、次第に胸がざわつき始め……。
原作は、台湾の人気作家ギデンズ・コーの自伝的小説。そして、自らが脚本・監督を手がけ、長編映画監督デビューを果たした。男子高校生の初恋と青春を親しみやすく描いている。想いを素直に伝えられずにすれ違う初恋ならではの切なさあり、男子グループのバカバカしいおふざけありといった具合だ。そして、この映画の最大の魅力はキャストにある。主人公コーチンを演じるクー・チェンドンは、端正な顔立ちでありながら格好良すぎず、無邪気なキャラクターを瑞々しく演じている。全員が好きになってしまう優等生シェン役のミシェル・チェンは、それを誰もが納得するほどの可愛さだ。ポニーテール姿も、久しぶりの再会の時のデート服も、コーチンがあげたTシャツ姿もすべて可愛い。高校生の時の幼さから、段々と大人の女性へと成長していく姿も見事に表現している。彼女は、撮影時28歳のはずだが、そんなことは微塵も感じさせない佇まいだった。(広)
Architecture 101
建築家のスンミン(オム・テウン)のもとに、仕事を依頼しにやって来たソヨン(ハン・ガイン)。スンミンは、その再会によって、彼女と過ごした学生の頃の気持ちを思い出す。彼女との仕事を通じて、新たな感情が芽生えていく。しかし、スンミンには婚約をしている女性がいて……。
『建築学概論』は、誰の胸にも残る、懐かしく甘く、そしてほろ苦い初恋を振り返ることができます。社会に出てあくせくと日々を過ごしているうちに、あの頃の純粋な気持ちを忘れかけてしまった大人には、胸が疼く映画です。
相手を純粋に恋することができるのは、初恋の特権といえます。しかし、「恋は盲目」です。相手が何気なく話す言葉やしぐさに舞い上がって喜んだり、反対に落ち込んだりもします。自分の理想のフィルターを通して見た理想と現実の違いの悩みですね。
『建築学概論』という不思議なタイトルは、10年間建築士として働いたイ・ヨンジュ監督の経歴から来ていますが、映画のなかでも「建築」は重要な意味を持っています。ソヨンとスンミンの未来の約束としての「家」、その約束が果たされる過程で、ふたりが再び結びつく舞台としての「家」。建築を専門としていた監督の素晴らしいセンスです。日本でも韓国でも「家」は幸福のイメージと結びついているのかもしれません。(彰)
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